働き方改革で人事担当者が疲弊しないためには「現場視点で考える働き方改革セミナー」で見えてきたこと

連載:働き方フロンティア 【第4回】

働き方改革で人事担当者が疲弊しないためには
「現場視点で考える働き方改革セミナー」で
見えてきたこと

  • 文字サイズを変更する
  • 印刷する

「働き方改革」を支援する立場として、現場の担当者の方にお話をうかがうと、意外と誰にも喜ばれていないという現実に出くわす。総論としてはどんな人にもメリットがあっても、各論としては犠牲となる人が生じる。こうした状況のまま改革ブームが進んでいいものか。

そんな問題意識で開催した「現場視点で考える働き方改革セミナー」だったが、ご登壇者からも、聴衆の方々からも想像以上に改革のリアルを求める空気が伝わってきた。

「働き方改革」が
時代のキーワードに

 

 「働き方改革」という言葉を、新聞や雑誌で見ない日はありません。この言葉は、今や時代のキーワードになっているといってもいいでしょう。しかし、その「改革」の内容について明確な答えがあるわけではありません。労働時間を短くすればいいのか、制度を変えればいいのか、意識を変えればいいのか。また、どのようなプロセスで改革を進めればいいのか──。その模索を、それぞれの企業がそれぞれに続けているのが現状といえるでしょう。

 私は、働き方改革は制度や仕組みをつくることももちろん重要ですが、それを導入するプロセスこそ肝心であると考えています。導入の仕方によっては、現場の社員や中間管理職の業務負荷がむしろ増えたり、ストレスがたまってしまったりするケースがあるからです。誰も犠牲にすることなく、狙い通りの成果を得られるような改革をどう進めればいいのか。この日のセミナー「現場視点で考える働き方改革」には、そのような問題意識がありました。

 セミナーでは、ご家族の大変な問題を抱えながら、さまざまな職場改革を断行してきた東レ経営研究所元社長、佐々木常夫さんに基調講演をしていただき、後半のパネルディスカッションでは、サイバーエージェント取締役人事統括の曽山哲人さん、スノーピークビジネスソリューションズ代表取締役の村瀬亮さん、コニカミノルタジャパン取締役経営企画本部長の鈴田透さんに、それぞれの企業で働き方改革をどのように進めてきたかを語っていただきました。

自分や家族のために
時間を確保するということ

 佐々木さんのご家庭は、長男が自閉症で、パートナー(佐々木さんは自身の妻をこう呼びます)は肝臓の病気とうつ病を患って、長い間入退院を繰り返していました。何度か自殺未遂をしたこともあるそうです。

基調講演の佐々木常夫氏

 佐々木さんは毎朝5時半に起きて、お子さんの朝食と弁当を作り、定時の1時間前に会社に行って部下の仕事の段取りを立て、6時には退社するという生活を送っていました。そんな佐々木さんにとって、仕事を効率的に進めることは、いわば生き延びるための必須条件だったのです。

 佐々木さんによれば、ビジネスは「予測のゲーム」であり、常に先手を打って仕事を進めなければなりません。そのために必要なのがタイムマネジメントです。タイムマネジメントとは何か。目の前に積み重なっていく仕事を重要度や締め切りによって分類し、適切なタイミングで処理していくということです。従って、タイムマネジメントとは「時間の管理」ではなく「仕事の管理」である。そう佐々木さんは言います。そして、部下の仕事の管理をサポートし、組織の成果を向上させるのが管理職の役割です。

 長時間労働とは、3つのものが欠如しているために生じる、という話も印象的でした。すなわち、「プロ意識の欠如」「想像力の欠如」「羞恥心の欠如」です。限られた時間の中で結果を出すのがプロであり、それができない人はプロ意識が欠如していることになります。毎日残業を続けていれば、体やメンタルに不調を来たすかもしれない。その想像力の欠如も長時間労働につながります。さらに、仕事を終えられないことを時間によってカバーし、残業代を会社に請求するというのは、本来恥ずかしいことであると佐々木さんは言います。その羞恥心が欠如しているから、長い時間働いてしまうのだと。

 人はなぜ働くのか。佐々木さんの答えは明確です。人や社会に貢献するためであり、自分自身が成長するためです。自身の壮絶な人生とそこで得てきた信念が、佐々木さんが進めてきた働き方改革のベースにあるのだということがよく分かりました。

 佐々木さんは、自分の家族のために時間を確保しなければなりませんでした。しかし、充実した人生を送ろうと思えば、誰もが自分や家族のために時間を確保しなければならないはずです。それが働き方改革の本質なのだということが、佐々木さんの話を伺ってよく分かりました。

新着記事

一覧