寿命100年時代を生き抜くために今やるべきことインタビュー:リンダ・グラットン【後編】

連載:働き方フロンティア 【第3回】

寿命100年時代を生き抜くために今やるべきこと
インタビュー:リンダ・グラットン【後編】

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長寿命化がもたらす働き方や生き方の変化を『ワーク・シフト』『ライフ・シフト』の2冊の著作で鮮やかに描き出し、私たちが今すぐ取り組むべきことを多彩な観点から示唆したリンダ・グラットン氏。

しかし、個人が会社に依存せずにキャリアデザインを描くことは、組織やネットワークが不要になることを意味するわけではない。新時代の組織はどうあるべきか、マネジメントの役割はどう変わるか、そして私たち一人一人は何を選択すべきなのだろうか。彼女へのインタビュー【後編】としてお届けする。

*【前編】こちら

組織に依存せず
働き方を自由にデザイン

アデコ働き方改革プロジェクトスタッフ(以下、アデコ):会社に依存してキャリアをデザインする時代が終わり、個人が自分のキャリアに責任を持つようになると、もはや組織は不要になるのでしょうか。

リンダ・グラットン Lynda Gratton
ロンドン・ビジネススクール教授。人材論、組織論の世界的権威。組織のイノベーションを促進する「Hot Spots Movement」の創始者であり、85を超えるグローバル企業と500人のエグゼクティブが参加するコンソーシアム「Future of Work」を率いる。世界で最も権威ある経営思想家ランキング「Thinkers50」では2003年以降、毎回ランク入りを果たしている。2013年ビジネス書大賞を受賞したベストセラー『ワーク・シフト』や『Hot Spots』『Glow』など一連の著作は20カ国語以上に翻訳されている。2016年10月に出版された『ライフ・シフト』では、寿命100歳時代の生き方を示し、大きな話題となっている。

リンダ・グラットン(以下、グラットン):寿命が延びていくにつれ、会社に所属せずに過ごす時間はどんどん増えていきます。退職後の孤独感も大きな問題になるでしょう。従来のように、人間関係の多くを会社に頼ったままでは生きにくくなると思います。同時に「会社以外の場所で、いかに自分の価値観に合ったネットワークをデザインしていくか」に目が向くようになるのは、自然な流れだと思います。

 ただし、日本人は英語が苦手な人が多いことがネットワークづくりの弱点になりそうですね。世界にはさまざまな働き方、暮らし方がありますが、日本語圏に限ってしまうとアクセスできるネットワークが限られてしまいます。私も日本語が話せるわけではないので偉そうに言えませんが(笑)。

アデコ:企業に属することで得られていた個人の安心感や安定は、そうしたネットワークで代替できるものでしょうか。

グラットン:企業に属するか否かにかかわらず、人間は、結局集まって何かをするのが好きなのだと思います。かつては、テクノロジーが進化して在宅勤務が可能になれば、誰もが家で仕事をするようになると考えられていましたが、いざ条件が整ってみても、在宅勤務よりも集まって仲間と一緒に働くことを好む人は少なくありません。

 私は、組織のイノベーション創出を支援する「ホットスポッツムーブメント」という会社を経営していますが、社員にいくら「在宅勤務OK」と伝えても、みんなオフィスに出てきたがるのです。

 ですから、企業の存在が相対的に小さくなる社会においては、「みんなが集まって仕事に取り組める場」を自らデザインできるかどうかが人生における重要なポイントになるでしょうし、これからの大きな課題になるでしょう。

アデコ:グラットンさんもやはり、集まって仕事をするのが好きですか。

グラットン:私自身は自宅で仕事をするのが好きですね(笑)。特に執筆の仕事は自宅の方がずっと集中できます。といっても、自宅が唯一の仕事場だと考えているわけではありません。ここロンドン・ビジネススクールにも、ホットスポッツムーブメントにもそれぞれオフィスがあり、タスクに応じて使い分けています。

 ホットスポッツムーブメントのオフィスは、テムズ川沿いに立つサマーセットハウスという建物の中にあります。18世紀に建てられた美しい建物です。個人事業主が100人ほど入居していて、それぞれ独立したオフィスを構えていますが、共用スペースでは大勢の入居者が毎日顔を合わせてお茶を飲み、あれこれと情報交換をします。私はこの場所をとても気に入っていますが、1人で何かをじっくり考えるのに向いているとは思いません。

 多くの人が「マルチプル・アイデンティティ」を持つようになれば、1人で多様な働き方を使い分けて、それぞれの生産性を上げていかなければいけません。タスクに適した働き方や働く場をダイナミックにデザインすることが大切なのです。

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