事業シナジーの追求が目的達成の手段となる

「バランス経営」実践の道のり<1>

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 御社の事業群は、ボラティリティ(変動率の振れ幅)によって、景気変動を受けやすい事業(家電、デバイス、産業メカトロニクス)と、受けにくい事業(重電、情報通信)の2つに分かれています。でも実は、「バランス経営」を均衡させるために、複数のポイントが重層的に重なっているように見えます。バランスを意識したポートフォリオを事業空間と時間(短期と中長期)で意識して構築されているようですね。

 結果的にそうなっているのかもしれませんが、「バランス経営」の本来の目的は、「成長性」「収益性・効率性」「健全性」の3つをバランスさせることです。たとえば、成長するためなら財務基盤を大きく毀損したり収益を捨てたり、あるいは収益性だけを追求して成長を犠牲にするといったことがないように、この3つのバランスを取りながら経営するということです。

 多額の借り入れを行って投資に回すようなことはしないので、安定性を追求していると言われますが、けっしてそうではありません。とはいえ、経営の安定性は非常に重要ですから、景気の変動を受けやすい事業と受けにくい事業のプロダクトミックスは常に考えています。それが安定をもたらしている。つまり、追求しているのは「バランス経営」であって、安定性ありきではない。

 以前、ある新聞のコラムが、当社の経営について、財務基盤を毀損してまで成長に投資するようなことをしない「最小不幸経営」と評しました。チャレンジをしないのは不幸せが一番小さくなるような経営であり、「最大幸福経営」というのがあってもいいのではないかと論じていました。ところが、当時、「最大幸福経営」を追求した会社の中には、必ずしも幸福ではない会社もあるように思います。

 誤解していただきたくないのですが、「最大幸福経営」がいけないと言っているわけではありません。財務だけを取り上げて「最小不幸経営」と決めつけるのも、やみくもに投資に走る「最大幸福経営」をはやし立てるのも、木を見て森を見ずで、本質はそこではない。繰り返しますが、当社の場合、バランス経営を追求した結果として安定性を確保しているのです。

製品と製品を組み合わせ
新たな「事業シナジー」を創り出す

 「バランス経営」は、事業空間と時間のポートフォリオをうまくミックスした結果として安定性が生まれている。そして、〝根っ子〟となる技術を共有しているわけですね。

 さらに付け加えれば、各事業でのメンテナンスやIoTのプラットフォーム――「CC-Link(注1)」や「e-F@ctory(注2)」――でサービス化比率を上げて景気変動リスクを抑える。そして技術では、ICT(情報通信技術)で強い技術と強い技術を組み合わせ、「営業本部戦略事業開発室」で営業サイドから事業と事業を組み合わせて、幾重にも横串を強化しているわけですね。

注1)
CC-Linkは、三菱電機が1990年代に開発した高速フィールドネットワークで、制御と情報を同時に扱える。2000年CC-Link協会が立ち上がり、日本を基盤にアジアをはじめとする世界各地に活動拠点を築き、産業用ネットワークCC-Linkのさらなるオープン化とグローバル化を推進、すでにパートナー企業は2800社(2016年11月時点)に達している。
注2)
e-F@ctoryは、FA技術とIT技術を活用することで、開発・生産・保守の全般にわたるトータルコストを削減し、ユーザーの価値創出に向けて全体の最適化を提案する統合的なコンセプト。ドイツの「インダストリー4.0」に代表されるIoTへの取り組みでは、10年以上前に名古屋製作所内に、e-F@ctory化モデル工場も稼働した。

 そうなりますね。強い技術を組み合わせて、強い事業をつくる「技術シナジー」の次に狙うのは、強い製品を組み合わせて、新たな価値を生み出す「事業シナジー」です。

 たとえば、「技術シナジー」ではパワー半導体の技術を各製品に共有して使っていますが、車の自動運転でも「事業シナジー」を創出しようとしています。自動車の予防安全のシステムでは、センサーやレーダーといった製品を組み合わせ、一方で高精度3次元地図をつくるために「ダイナミックマップ基盤企画」という会社をつくりました。ここには地図の大手メーカーや国内自動車メーカーも多数参加していただいた。

 さらに、我々が開発を担当する準天頂衛星(人工衛星)で高精度位置情報を活用する。つまり、衝突しないためのセンサーやレーダーに高精度な位置決めを使えば、自分がいまどこにいるかはもちろん、そこから曲がり角までの距離も、その角度も予測できるようになる。そのように製品と事業を統合してシステムとして提供している会社は、まだないのではないでしょうか。

 こうした形で「事業シナジー」を出せるのは、我々が幅広いメニューを持っているからだと考えています。

 グーグルなどの自動運転技術と、どう違うのでしょうか。

 グーグルなどが活用しているGPS衛星の場合、条件により10メートル程度の測位誤差が出ますが、準天頂衛星などを活用するともっと正確に数センチの誤差で測位できます。この高精度測位情報と高精度3次元地図を組み合わせることで、雪に覆われた道路でもセンターラインが見えなくてもちゃんと走っていけます。

 もう一つ例を挙げると、ビルの「事業シナジー」があります。我々はエレベーターやエスカレーターだけでなく、ビルに付随する空調やさまざまな電力設備、管理システムなどの非常に幅広い製品を扱っています。従来はいずれも単品で販売していたのですが、いまやワンストップで、販売からメンテナンスまでの統合サービスを提供しています。

 今後は自社の納入機器と他社製品も含めて、それらをつないで制御する。いわゆるZEB(ゼロエネルギービル)(省エネや再生可能エネルギーで全体のエネルギー消費を限りなくゼロにするビル)を志向しています。これも我々の強みを結集させ総合的に活かせる領域です。

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