【富士フイルムホールディングス】

奇跡の改革を成し遂げた果断の経営

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 とはいえ当時でも自己資本比率は約7割に上るなど財務は盤石でした。なぜ大規模なリストラが必要なのか、また、どのようにして再び成長させるのかという経営者の思いを、社員にどう「伝えた」のでしょうか。

 私がCEOに就任してまず取り組んだのは企業改革の計画をつくることでした。2004年2月に「VISION75」という創業75周年に向けた5カ年の中期経営計画を策定。「VISION75」は、「徹底的な構造改革」と「新たな成長戦略」、「連結経営の強化」を3つの基本方針とし、富士フイルムを売上高2兆~3兆円のリーディング・カンパニーとして存続させることを目指しました。

 私は、経営トップがみずから考えて改革に取り組む姿勢を示し、会社の現状と課題、およびその対応策・解決の指針について、社内報やイントラネットなどいろいろな場面で発信してきました。また、経営トップと現場の危機に対する認識の違いについては、社員との対話や現場視察などを通じてギャップを埋める努力をしました。全社員の力を結集することで、事業構造を大きく転換することができました。

 写真関連事業の社員1万5000人のうち、3分の1に当たる5000人もの人員スリム化となれば、社内で反発もあったかと思いますが、どのように「実行」したのでしょうか。

 もし会社が潰れてしまえば、それこそ何も残らないことになります。リストラをするのか、しないのか。会社を潰すのか、潰さないのか。何が重要なのかというプライオリティを考えれば、経営者としてやらなければいけないことは明らかでした。

 ただし、そこには最大限の配慮も必要です。リストラには巨額の費用が伴いますが、当時の富士フイルムには幸いなことに財務的な裏付けがありました。リストラを実施するに当たり、誠心誠意取り組み、できる限りのことをしました。たとえば、長年、当社の写真フィルムを販売してきた特約店に対しては、そこで働いている人たちに退職金が払えるようにするために営業権を買い取りました。

 経営者には、会社を生き残らせる責任があります。やらなければならないことは断固としてやらなければならない。それがリーダーの仕事です。

 リストラによって人員は大幅に削減したものの、写真フィルム事業を存続させました。同時期にライバルのコニカミノルタが写真とカメラの事業から撤退を決めたのとは対照的でした。

 企業というものは、ゴーイング・コンサーン、つまり、事業が将来にわたって継続していかねばなりません。そのためには収益を上げ続ける必要があります。

 では収益とは何でしょうか。それは社会に価値を提供したことの対価です。企業は常に社会に対する価値を生み出し続けることで事業を継続できるのです。社会に価値を生み出し続ける企業とは、すなわち、社会において存在意義のある企業だと考えています。

 当社の存在意義の一つは写真文化を守ることです。人生の輝かしい思い出や喜びの瞬間などを永遠に閉じ込める写真は、誰かが支えなければならない人類の文化です。もちろん、経営者として赤字を出し続けることは許されませんが、損得を超えて取り組む価値があることだと思いました。

選択に迷ったらどちらも正しい
足りない部分は努力で補う

 大きな決断をする時に「勝算が6割あればやる」とおっしゃっていますね。それはどういう理由からですか。

 小さいことなら勝算が5割でもやります。しかし、勝算が5割というのはギャンブルです。経営はギャンブルでやるものではありません。「勝つか負けるかわからない」は許されない。勝算が6割あれば「努力すれば何とか勝てる」ということです。

 決断の際に迷うことはないですか。

 経営者は決断の連続です。毎日何かを決めなければなりません。A案とB案、2案があり、特に優劣つけがたいということは、つまりどっちを選んでも大きな差はないということです。あとは努力で補い、成功させればよいのです。

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