「事業投資」 から 「事業経営」 への転換
いかに経営力を最大化するか

「新」商社論<1>

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 垣内さんが畜産部にいた1993年頃、アメリカの食肉加工業のインディアナ・パッカーズ(IPC)が赤字続きだったため、IPCの事業を継続するか、撤退するかの調査で何度もアメリカに行かれました。本社が撤退もやむなしという判断に傾いている時、事業継続を進言されたそうですが、この時、多くのことを学ばれたのではないですか。

 IPCでは徹底的に事業分析を行い、中長期で見れば負けるビジネスではないと確信していました。累積赤字が1000万ドルに達したら、それで撤退するという条件付きでしたが、追加の出資が認められ事業を継続することになりました。

 それ以前は、アメリカ企業が55%、三菱商事が45%の出資形態でしたが、事業継続を決定するに当たり、出資比率を変更して三菱商事が過半を握る体制に切り替え、大胆なリストラも進めるなど、大変なエネルギーを要しました。

 アメリカで豚肉を加工し、同国の国内市場で80%、日本向け輸出で20%を販売する事業でした。全員が一致団結して「何としても成功させるぞ」という強い思いのチームワークに加えて、為替の好転も追い風となり、業績の改善につながりました。現在は三菱商事80%、伊藤ハム20%の出資となり、収益に貢献してくれています。

 事業経営という場合、出資比率の目処はどれぐらいでしょうか。

 先方の要請や取引関係を強化するうえで若干の出資を行うケースはありますが、これはあくまで取引の維持拡大を目的とするものです。20%以上の持分法適用会社になると、取引の維持拡大だけではなく、その会社の成長に三菱商事が貢献できるかどうかという観点で、従来の関係を見直す必要があります。

 いままでは、必ずしもこうした考え方に基づいて出資していたわけではなかったかもしれませんが、現在、これからも関係を続けて、よりコミットしたほうがいいのか、関係を解消するのかなどの整理を進めています。

 事業経営に携わる場合、経営人材の派遣なども行うのでしょうか。

 必要だと判断すれば人材を派遣していますが、最近では、関連会社ではない企業からも、人材を派遣してほしいといった要請がたくさんあります。

 商権を拡大するため、商社が資本参加することも多かったと思いますが、ベンチャーキャピタルとは違って、純然たる投資ではないので、二律背反、矛盾が生じませんか。たとえば、ローソンなどの場合、三菱商事の連結子会社となることで、全方位での仕入れができなくなり、ビジネスの幅を狭める可能性はないでしょうか。

 ローソンが繁栄することを第一とすべきです。三菱商事グループの食品流通を活用したほうがプラスになれば使ってください、それよりも優れた会社があれば、そちらを優先してくださいという是々非々の判断をしており、まったく問題ありません。

 三菱商事の利益よりも、投資先企業の利益を優先するということですか。

 投資先の利益を考えることがすべてだと思います。三菱商事の業績は単体ではなく、連結で測るようになっているからです。収益のほとんどを連結先で計上しており、関連会社、子会社の強化が最優先事項になります。顧客、関連会社、子会社との取引量を拡大することで、単体の売上げや利益を押し上げようという発想は過去のものです。

 ローソンに対しては、出資比率を3分の1に上げ、さらに2017年に50%超に引き上げる予定ですが、狙いは何でしょうか。

 グループを挙げて、ローソンとさまざまな施策を打っていくことがローソンにとってプラスだと確信したからです。海外展開の支援も一つですが、コンビニエンスストアは生活インフラとして価値が高いと考えています。たとえば、ローソンは銀行業への参入を予定しており、このような新たなサービスを提供していきたいと思っています。

 また、ローソンには1万2000店強の店舗がありますが、ローソンとローソンの間に新たに出店するなどして、ただ単にこれを2万、3万と増やしても、カニバリズム(共食い)を起こすだけで、意味がないと思っています。店舗数の増大そのものには興味はありません。

 平均日販を上げて質を高めるとか、近隣のお客様への機能、サービスをどう強化するかが重要です。もちろん、セブン—イレブンやファミリーマートの店舗数が1万8000店超あるので、同業に負けたくない気持ちがローソン自身にあるのはおかしくありません。それを否定したり、拒否するつもりはなく、むしろそうした闘争本能を持つことは大事だと考えています。

 

*つづき(第2回)はこちらです


●聞き手|前原利行、松本裕樹(ダイヤモンドクォータリー編集部)
●構成・まとめ|前原利行 ●撮影|中川道夫


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