「事業投資」 から 「事業経営」 への転換
いかに経営力を最大化するか

「新」商社論<1>

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 当初、社員に理解してもらいたかったのはどういう点ですか。

 事業経営モデルにシフトするというところです。新興国経済の低迷、エネルギー政策の変更、地政学的リスクの増大など、産業界を取り巻く環境は大きく変わっています。こうした変化に対応していくことが重要と考えて打ち出した方針ですが、事業経営を通じて、当該業界ないし当該会社の成長に寄与することが三菱商事の成長につながるという点を直接伝えることで、深く理解してもらいたいと考えました。

 従来の事業投資でも、出資比率に応じた議決権や拒否権を確保して、投資先企業の経営に参加していたのではないですか。

 その通りですが、それらはあくまで、祖業である原料や製品のトレーディングを維持拡大することを主眼に置いたものが中心であったと思います。

 1980年代前半に「商社冬の時代」が訪れ、商社にとって厳しい事態になりました。インターネットが普及し始めた2000年前後には、メーカーと消費者が直結し、「商社不要論」が登場しました。こうした中で、商社の機能を見直す動きが加速しました。

 現在、三菱商事グループには、出資比率20%以上の持分法適用会社と、50%超の連結子会社で、1200社を超える関連企業があります。それら事業投資先からの収益が三菱商事の収益のほとんどを占めています。

 事業投資から事業経営に踏み込む際に、まずは現在ある関連企業の経営レベルを上げることにフォーカスしたいと考えました。商社の機能について、歴史的な経緯も含め冷静に分析すると、いまがターニングポイントで事業経営の時代が到来すると信じています。

 事業経営のステージになると、どのような変化が起きるのですか。

 三菱商事の社員を「経営人材」に育て、その経営力をベースにして、より深く経営に関わって事業を革新し、新たな価値創出を目指します。当社社員一人ひとりの腹に落ちるのには時間がかかりましたが、説明会の効果はあったと手応えを感じました。

「事業経営へ」の原点となった
アメリカ豚肉加工会社の体験

 他社に先駆けて、事業経営へと収益モデルを変革しようというわけですか。

 他社についてコメントする立場ではありませんが、当社自身の過去を振り返ると、原料や製品のトレーディングを祖業として発展し、その後、変化する環境に対して、みずからを変革させてきた歴史的経緯を踏まえれば、こうした流れの中で、いま本格的に事業経営にシフトしていることは自然なことだと考えています。

 垣内さんの出身母体である畜産部門では養鶏・養豚会社や食肉加工会社を経営するなど、事業経営へのシフトは当たり前のビジネス環境でした。生活産業グループの純利益は2010年度の463億円が2015年度には735億円に増えています。事業経営が成果を上げてきたという自信の裏付けがあるのではないですか。

 自分がやってきたことをフィルターにして、他の事業を見ることが経営を考えるうえでの原点になり、新しい方針の軸になっていることは間違いありません。畜産ビジネスの分野では早くから事業経営という動きが起きていましたが、これが例外的なケースだとは思いません。どの業界でも同じトレンドが加速していくと考えています。

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