世界人口の8割がアジアとアフリカに

日本の新興国市場での出遅れは深刻
リスクを織り込みつつ迅速な意思決定を

  • 文字サイズを変更する
  • 印刷する

アフリカ進出に当たっては
インド企業と組むのも有効

 新興国に進出するうえで共通の課題と留意点は何ですか。

三浦 まず、適格な現地ビジネスパートナー(提携相手)を慎重に評価・選任することです。

 文化・商習慣・雇用慣行などの相違を超えて、現地のニーズに則して市場浸透を図るためには、現地のビジネスパートナーとのアライアンスが重要です。ただし、その評価・選任に当たっては、インテグリティ・デューデリジェンス(企業や経営者個人の素性、資本関係、実績、評判、政治思想などの情報を非公開情報も含めて収集・分析を行うこと)などの手法による背景調査を実施するなどして、慎重を期すことが必要です。

 一方で、新興国ではオーナー経営者や同族経営者がパートナーや取引相手となることが多く、こうした場合は個人的な信頼関係がベースとなります。評価・選任を慎重に行った後は、人と人の信頼関係を構築することも大切になります。

プラサナ 適格なパートナーを選ぶ際には、現地企業だけではなく、現地と関係の深い第三国の企業も検討の範囲に入れるべきだと思います。たとえば、中東とサブサハラ(サハラ砂漠以南)を中心としたアフリカには古くからインド系住民が多く、多数のインド企業が広くビジネスを展開しています。さらにインド政府は、インドで生産した製品をアフリカに輸出しやすいように税優遇措置なども設けています。

 すでに一部の日本企業がインドを南アジア・中東・アフリカ事業の拠点とする動きが出てきていますが、中東・アフリカに進出しているインド企業との提携を視野に入れることも有効だと思います。

三浦 新興国に進出するうえで、特に日本企業にとって課題となるのは、市場ニーズにマッチした製品やサービスが投入できるかです。これは当たり前のことと思われるかもしれませんが、多くの日本企業はスペックダウンすることが苦手です。日本で培った技術や品質に自信があるだけに新興国市場ではオーバースペック、過剰品質の製品を投入しがちです。

 現地のニーズに合った適度な機能と品質で、価格を抑えた製品を提供できないと、中国や韓国の企業とは戦えません。また、新興国では、各種企業法・税制・会計基準などについて、先進国を参考にしながら整備を進めてはいますが、法令自体に不備があったり、行政担当者の経験不足により運用方法にバラつきがあったりする場合も少なくありません。また、日本企業は税務当局の標的にされやすい面があり、税務の専門家に相談しても正解がないこともあります。法律・税務・会計など各分野において現地における豊富な経験と実績、そして行政当局とのネットワークを持つ専門家集団をパートナーとすることもリスクマネジメントの点からとても重要です。

 電気・水道、通信、交通などの公共インフラが未整備であることも珍しくないので、それを前提とした事業計画、準備も不可欠です。

プラサナ これも日本企業に特徴的な課題といえるかもしれませんが、日本国内が豊かで安全、清潔であるがゆえに、多くの新興国は一般の日本人から見て生活するうえで不便や不満、不安を感じることが多いのに対し、アジアの隣人たちは日本人ほど新興国での生活を苦にしません。また、日本人が数年内に帰国することを前提に現地駐在しているのに対して、中国・韓国系企業の社員たちは、「事業を成功させるまでは帰らない」という意気込みで働いています。結果的に市場ニーズに精通することになりますし、現地でのコネクションも強まります。現地にいる間は、日本企業のようにメイドや運転手付きといった恵まれた待遇を約束されているわけではありませんが、成果を上げて本国に帰ればポストも報酬も大きくアップするケースが多いですね。

  また、日本企業のように多くを本国で決めるのではなく、現地に派遣したリーダーに権限を与え、一定の範囲でリスクを取らせ、迅速に意思決定させています。

 多くの新興国は日本を尊敬していますし、日本とパートナーシップを組みたいと考えている企業は多い。しかし、新興国市場で日本が出遅れているのは事実ですから、現地企業あるいは他のアジア企業の進出先市場での成功事例に学び、それらとコラボレーションすることも検討すべきだと思います。

三浦 他国に日本企業が学ぶ点があるとすれば、その最たるものは成長意欲やアグレッシブさかもしれません。かつて日本企業の強みは長期的視点に立った経営だったはずです。そして、10年、20年先の成長を考えれば新興国市場でのプレゼンスの拡大が欠かせないはずなのに、残念ながらいまは大きく出遅れてしまっています。

 長期的な視点に立って新興国への参入戦略を明確に描き、一定のリスクは織り込んだうえでそれを評価・管理し、なおかつアグレッシブな意思決定ができるリーダーの決断力、それを実行できる社内体制の整備が、いま求められているものと思います。

 


●聞き手|田原 寛、岩崎卓也(ダイヤモンドクォータリー編集部)
●構成・まとめ|田原 寛 ●撮影|佐藤元一


DIAMOND Quarterly 第2号

2016年12月10日発売 定価840円(税込)

特集 デジタルの真価

『DIAMOND Quarterly』はダイヤモンド社が2016年10月に創刊した、「週刊ダイヤモンド」および「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」誌の定期購読者および、東証一部上場企業の執行役員10000名に直送する唯一無二のマネジメント誌です。「21世紀にふさわしい日本的経営を再発明する」をコンセプトに、企業経営者、アカデミズム、コンサルティングファームなど各界のスペシャリストへのインタビューや提言を掲載し、経営者のための新しい知的プラットフォームを目指します。

新着記事

一覧