税の争奪戦が日本企業を脅かす

“税引後”利益の最大化はCEOの任務

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税務戦略なき事業計画は
海図を持たない航海に等しい

 タックスガバナンスを整備して、タックスマネジメントを強化するために、何から手をつけていけばいいのでしょうか。

神津 まず人的リソースを再配分する必要があります。

 アメリカのある大手企業は税務部門に全世界で1000人規模の人員を擁していて、アメリカ本社だけでも200人は下りません。これは少し特別な例ですが、売上高250億ドル以上の欧米企業の税務部門の人員は、平均で101名に上るという調査結果もあります。しかもその中には、大手会計事務所のパートナークラスの人材が数多く含まれています。これに対して日本企業はといえば、多くてもせいぜい数十人規模というところではないでしょうか。この人的リソースの差は大きいと言わざるをえません。

 ただ、国際税務に習熟した人材をすぐに確保することは難しいでしょう。地道な育成を続けると同時に、税務業務そのものを効率化、高度化させていく必要があります。

角田 ガバナンスの観点からは体制の再構築が求められます(図表)。

 

 具体的には、グローバルの税務機能を率いる税務部門を置いて情報と権限を集約し、CEOやCFОに直接リポートするラインを整備する。欧米企業では、最高税務責任者(CTO:Chief Tax Officer)は経理や財務から独立した部門を率いて、CFОへのリポーティングラインを有しているのが一般的です。

 また、個別の事業での意思決定の際に税務部門の関与を高めていく必要もあります。プロジェクトに早い段階からメンバーとして加わり、事業部門と一緒になってコストとリスクの両面から税務スキームを検討して、より最適なオプションを提示する。

 日本企業の場合、どうしても事業部門が単独でオペレーションする傾向が強く、後から税務上の問題が発覚するケースも見られます。財務戦略なしの事業計画がないように、税務戦略なしの事業計画も海図を持たずに航海に出るようなものです。財務との連携が、より精緻で強い事業の実現につながります。

 


●聞き手|新井幸彦、相澤 摂
●構成・まとめ|相澤 摂 ●撮影|中川道夫


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