「高度な知的処理」との共創が 経営者の可能性を広げる

AI×ロボットと経営の幸せな関係

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テクノロジーとの共創が
人の可能性を広げる

 AIはこれまでに2回、バブルとその崩壊を経験しています。3度目の「AIの冬」はないのか、もう少し見極める必要はありませんか。それとも、すぐにでも活用に着手したほうがいいのでしょうか。

田中 2つの理由から、できるだけ早く導入すべきだと思います。1つは、導入してすぐに目覚ましい効果を発揮するわけではないからです。使いながら最適化していく必要があり、たとえばコールセンターで活用するにしても、半年から1年程度の導入期間を見込む必要があります。2つ目の理由は、いま取り組めばAIの活用においてグローバルで優位に立てる可能性があるからです。欧米企業は先進的なイメージがありますが、時間にしてせいぜい1年ほど先を行っているにすぎません。まだ追いつき、追い越す余地は十分にあります。

 導入するに当たっては、AIやロボットに代替すべき業務とそうでない業務、社内に残す業務と社外に切り出す業務などを見極めることも必要です。AIもロボットもERPなどとは違って一部の業務にパイロット導入できるので、適合性や効果を見ながら本格導入に備えていくのが賢明なアプローチでしょう。

平野 先行した企業が失敗する姿を見ながら、技術やベンダー間の競争の趨勢を見守るという判断もありえますが、学習効果を蓄積できることは、やはり大きな利点といえます。加えて、機械化で置き換えられて職を失う従業員のことを考えれば、技術的失業が本格化する前の、身の振り方の選択肢が多いうちに先行したほうがいいでしょう。

田中 バブルとまではいかなくても一種のブームのような状況にあるのは否定できません。あれもこれもできるようになるという過大評価があるかと思えば、ITを使ってデータ分析や予測をしただけのものをAIと称している。こうしたブームに乗って安易にAIやロボットを導入したけれど、思ったような成果が上げられなかったという失望が広がれば、AIやロボット技術の可能性は潰されかねない。そういうことがないようにしっかりサポートして価値を生み出していくのが、我々コンサルティングの役割だと考えています。

平野 発明直後の自動車は特別な機械技能を持つ運転手だけが使いこなせる特別な機械でしたが、技術の発達によって誰もが乗りこなせるようになりました。また自動車普及のプロセスを通じて儲けたのは自動車産業でしたが、広く普及した結果、新しい産業や生活スタイルが生まれました。同じように、現在のロボット化のプロセスを通じて圧倒的に優位に立つのはコンピュータサイエンスの能力を持つ人々ですが、それ以外の普通の人もAIのご利益を享受できるようになるはずです。自動車がそうであったように、2つの異なった水準でのメリットがあるということです。

 19世紀初頭、産業革命が進行していく中で、職を失うことを恐れた労働者たちは機械を破壊するラッダイト運動を展開しましたが、工業化を食い止めることはできませんでした。同じくいま、人がAIやロボットに対決を挑んでも勝てるわけがないし、機械化の波に抗うこともできません。先人たちが機械を活用して生産性を上げて豊かになったように、私たちもAIやロボットを味方にして、協働作業を通じて人間本来の能力を高め、より豊かで幸せな社会をつくることを目指すべきでしょう。

 


●聞き手|岩崎卓也(ダイヤモンドクォータリー編集部)
●構成・まとめ|相澤 摂 ●撮影|中川道夫


 

DIAMOND Quarterly 第2号

2016年12月10日発売 定価840円(税込)

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