IoTで人智を引き出し 究極のモノづくりを目指す

デンソー流 「人づくり経営」<3>

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*第2回はこちら

達成感を経験できる場を設け
モノづくりの志を育てる

編集部(以下青文字):「モノづくりは人づくり」ともいいます。生産効率の向上で従来の単純作業などが減る一方で、いかにして創造的な人材を生み出すかが課題となります。デンソー流の人づくりについてどう考えていますか。

有馬(以下略):おっしゃる通り、当社のモノづくりの根幹は人です。つまり、現場で働く人の知恵をいかに引き出して、現場で改善をし続けられるかが大事です。特に自動車のモノづくりにおいては、2つの理由から人が重要だと考えています。

 1つ目は、車が人の命を預かる製品だということ。人の命を預かるモノづくりには一切の妥協があってはいけません。単にモノをつくればいいというものではなく、創意工夫でとことんモノづくりを追求する人が求められます。

 2つ目は、車が数万点の部品の集合体であり、一つの企業だけのモノづくりでは形にならないということです。車の部品はさまざまな材料から成り立ち、大小数万点に及ぶ部品から成り立っています。そして、それを部品として形にするラインや設備も均一ではなく、さまざまな生産設備が必要です。同じように見える部品や材料でも日々まったく同じモノが入ってくるとは限りません。「現場は生き物」ともいわれますが、その日、その部品、その材料に応じて、絶対に不良を出さないモノづくりをしなくてはならず、そのためには、現場を知って、正しく判断できる人の存在は欠かせません。

 デンソーが求める人を育てるために、どのような仕組みづくりや取り組みをしているのですか。

 多くの会社と同様、当社でも職種やレベル別にさまざまな研修プログラムがありますが、そうした制度を設けるのは必要条件にすぎません。当社が求めているのは、優れたモノづくりを目指そうという志を持った人です。

 そうした志を育むためには、モノづくりの楽しさ、苦しさ、そして凄みを実感することが必要なんです。そのためにはベテラン社員から話を聞くだけでは駄目で、とにかく現場で手を汚し、汗を流すんです。議論してぶつかったり、うまくいかず苦労をしたり、あるいは失敗して痛い目に遭うこともあるでしょう。個々人は解決策が見えずに悶々としたり、不安だったりするのですが、同じテーマで苦しんでいる人たちが増えてくると、彼ら彼女たちの会話の中から、点と点が突然つながって思わぬ出口が見えてくる。何かを生み出すにはこうしたプロセスがあるのだろうと思います。そうして目標を達成し、モノづくりというものを体で知ることで一人前になる。こうした経験が土壌となり、初めて志が育つんです。

 もう一つ、当社には組織の壁を超えクロスオーバーでチームを結成し協業し合う風土があります。製品や技術を議論する時には、組織や役職も関係なく、全員がプロ意識を持って問題や課題に取り組んでいます。このような風土をこれからも大切にしていきたいと思います。

 デンソーでは生産設備を内製化していますね。あえて内製化にこだわるのは、人を育てるためという理由もあるのでしょうか。

 ええ。当社では、たとえば一人の製品技術者が「こんな製品をつくりたい」といってポンチ絵を描くと、加工に精通した腕利きたちが集まり、生産技術屋や設備設計屋なども集まって議論になります。さらに生産設備を実験的につくることになると、現場の技能者たちも加わり、ワイワイやり始めます。製品開発から生産設備づくりまでを一気通貫に保有しているので、分野の異なるスキルがどんどん身につくわけです。

 内製化のもう一つのメリットは、現場での日々の気づきや革新事例などのベストプラクティスを即座に稼働中の生産設備に取り込むことができることにあります。今後、IoTの導入でさまざまな「見える化」が進むことで、生産設備の内製化のメリットはさらに高まるでしょう。

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2016年12月10日発売 定価840円(税込)

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