IoTで人智を引き出し究極のモノづくりを目指す

デンソー流 「人づくり経営」<1>

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グローバル化で薄れる
日本の産業構造の厚み

 そもそもいまの日本の自動車業界は、どのような状況に直面しているのでしょうか。

  これまで日本のモノづくりを支えてきた強みの一つは、中小企業を中心とした産業構造の厚みです。特に自動車産業は裾野が広く、多くの企業が相互研鑽に励むことで、競争力を高めてきました。しかし、国内空洞化やグローバル化が進展し、日本のモノづくりの厚みが失われつつあります。

 さらに新興国の技術力向上で製品の低価格化が進んでおり、加えて、電機業界やIT業界などの異業種参入も増え、自動車業界におけるグローバル競争の動きは日本で想像している以上のスピード感でダイナミックに変化しています。顧客に選ばれる価値を提供する企業になるためには「多様性×スピード」の値をどこまで高められるかが、カギになるでしょう。

 そうした厳しい環境でデンソーが勝ち抜くためには、何が必要なのでしょうか。

 1つ目は、モノづくり力の向上です。これから先、車の機能や動力源などが変わったとしても、人の命を乗せた移動手段であることに変わりはありません。その意味では家電製品と比較し、桁違いの信頼性と品質が要求されている製品です。当社は長年にわたり、時間とエネルギーをかけて品質をつくり込んできた歴史があり、その文化が染み付いています。このモノづくり力こそが当社の強みだと思います。競争が激しくなる中、モノづくり力を確実に伝承するとともにさらに鍛錬する必要があります。

 2つ目は、技術開発力の向上です。自動車業界は現在、異業種の参入によってカーシェアリングなどの新しいモビリティサービスが誕生し、さらに技術開発のスピードも劇的に速くなるなど、激しい変化の時代にあります。こうした中、当社の顧客である自動車メーカーから選ばれる企業となるためには、顕在化している課題のみならず潜在的な課題を掘り起こし、魅力ある商品の企画とそれを具現化する開発力の向上が不可欠です。これまで培ってきた車部品メーカーとしての知見をフルに活かし、顧客の期待を超える新しい価値の提案、および、車のユーザーの笑顔や幸せにつながる商品の企画を、これまで以上のスピードで具現化することがとても重要だと考えています。

 当社はこれまで自社の中ですべてをやり切る前提で仕事を進めてきたところがありました。しかし今後は、たとえば自動運転や車と車、社会がつながるコネクテッドカーのような新しい分野の技術開発については、志をともにできる他社と積極的に仲間づくりを行い、よりよい製品・サービスを提供していきたいと思っています。

 3つ目は、グローバル化です。当社は日本生まれの会社ですから、欧米のスタンダードを追うのではなく、日本で鍛錬してきたデンソーのモノづくりのよさを大事にし、それを海外の社員たちにも徹底的に学んでもらいたい。当社は世界38の国と地域に130の工場があります。生産している製品は工場によって異なりますが、「デンソーのモノづくりは世界のどこでも同じだ」といわれるようにしたいのです。そのためには、単に生産拠点を海外に増やすだけではなく、働く人たちのモノづくりに対する高い志を一つにすることも、グローバル展開においては大事なことだと考えています。

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