進出類型と求められる組織能力海外事業の“死の谷”をいかに乗り越えるか

進出類型と求められる組織能力
海外事業の“死の谷”をいかに乗り越えるか

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(左)常務執行役員 合田泰政 (右)常務執行役員 光澤利幸
YASUMASA GODA
1990年全日本空輸入社、1995年にコロンビア大学ビジネススクール卒業後、メリルリンチ証券会社(現メリルリンチ日本証券)に入社し、投資銀行部門でM&Aアドバイザリー業務に従事した後、調査部に移籍し、2004年マネージングディレクター。2009年フロンティア・マネジメントに入社し、2015年より現職。

TOSHIYUKI MITSUZAWA
1993年日商岩井(現・双日)入社、98年からニューヨークに勤務。2001年プライスウォーターハウスクーパース・フィナンシャル・アドバイザリー・サービス(現プライスウォーターハウスクーパース)、2003年ラザード フレール、2006年GCAサヴィアンを経て、2012年フロンティア・マネジメントに入社し、現職。

M&Aは他社の事例を含め
失敗の知見を共有する

 最後にクロスボーダーM&Aについても触れておきたい。

 海外での製造拠点立ち上げは、自社保有ノウハウで相当程度対応可能であるが、現地市場インテリジェンスの獲得は高度に文化的な内容を含むことから、外部の力を活用することが極めて重要である。したがって、クロスボーダーM&Aは海外市場開拓において重要な戦略的意義を持つことは言うまでもない。

 ただ、クロスボーダーM&Aは国内でのM&Aより難度が高く、M&A巧者と称される企業でもトライ・アンド・エラーを繰り返している。その意味では、最初は失敗覚悟でリスクを取る姿勢も必要になる。

 その場合は、撤退基準をあらかじめ決めておくことが肝要だ。海外企業を買収する、あるいは現地で合弁会社を設立するケースでも、うまくいきそうもないことがわかったら、傷口を広げる前に撤退したほうがいい。事業縮小、外部企業との合弁化、事業売却、清算という選択肢を考えるに当たり、赤字になってからでは選択肢は狭まる。失敗から学んだことを社内で共有し、次のチャレンジに活かす柔軟な姿勢を持つことだ。それが遠回りなようでいて、実際は成功への近道となる。

 ちなみに、先進的な企業の間では、安易なM&Aによる失敗を避ける必要性についての認識が高まっており、他社の失敗事例を研究するために我々が情報提供を求められることが増えている。社内のM&A専門チームだけでなく、事業部門のスタッフもM&Aに深く関わることで戦略やデューディリジェンスの精度が高まるが、一般的に事業部門の人たちはM&Aに関する知見に乏しい。他社の事例を含めて広く知見を共有しておくことも、死の谷に陥るリスクを避けるための重要なプロセスの一つといえるだろう。

 


●構成・まとめ|田原 寛(ダイヤモンドクォータリー編集部) ●撮影|住友一俊


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2016年12月10日発売 定価840円(税込)

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