進出類型と求められる組織能力海外事業の“死の谷”をいかに乗り越えるか

進出類型と求められる組織能力
海外事業の“死の谷”をいかに乗り越えるか

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海外現地法人を
離れ小島にしてはいけない

 先進国市場ではうまくいっているが、同じ手法が新興国では通用しないと悩む企業もある。電子部品メーカー、B社のケースである。

 B社は先進国数カ国に現地法人を設立、独立採算制で運営し、それがうまく機能していた。そのため、アジアの新興国に進出するに当たっても、同様に独立採算制を敷いた。

 すると、アジアの現地法人ではすぐに黒字を出そうと欧米で販売実績のある製品を市場に投入した。開発コストはかからないし、確実に売れるだろうと見込んだからだ。だが、成熟した欧米市場と新興のアジア市場ではニーズが大きく異なっており、製品は思うように売れなかった。

 そこで我々は新興国では独立採算制をやめることを進言した。そして、海外事業本部の管轄下にあったアジアの現地法人をそこから外し、製品開発機能を持つ事業部の一部門に位置づけた。その事業部が持つ製品群を世界でどう売っていくか、その全体戦略の中でアジア市場をどうとらえるかという視点で新興国開拓の戦略を練り直してもらったのである。

 その結果、B社では現地法人内に製品開発チームを編成、ローカルニーズに即した製品を開発し、市場投入したのである。これは単なる権限委譲とは異なる。現地法人のグリップはあくまで本社の事業部が握っているが、現地の製品開発チームと緊密に連携しながら市場インテリジェンスを吸い上げ、ローカル専用の製品開発につなげていったのである。

 現地法人も事業部のバックアップを受けながら、なおかつ専用製品という武器を与えられたことで、高いモチベーションを持って営業活動に臨むことができた。プレーしているフィールドは違えども、あくまで同じチームの一員であるという一体感を実態的に醸成すること、現地法人を離れ小島のような存在にしないことが、死の谷を乗り越えるには欠かせない要素となる。

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