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【CASE5:竹中工務店】
「AIを活用したスマートビル」と描く
都市のイノベーション

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「人流の見える化」による
新たな可能性

「エネルギーの見える化」に加え、もう一つ、竹中工務店が注力しているのが、「人流の見える化」だ。

 この技術は、2015年11月に開催された「鉄道技術展」で初めて公表された。会場内にセンサーを設置し、そのセンサーが来場者を感知することで、その動きをリアルタイムに表示できる仕組み。実際、このモニターは、鉄道技術展の開催中、会場内にある竹中工務店の出展ブースに展示された。

「人は点で、その軌跡は線で表示されます。たとえば、小さなお子さんのいる親子連れはすぐにわかります。2つの点が常に一緒に動いていますから。こうした来場者の人流データを蓄積し分析すれば、会場内の動線や展示ブースのレイアウトなど、今後のイベント運営の改善に大いに役立ちます。また、緊急時の避難計画の検討にも有効です」(政井氏)

 こうした人流データは、今後も増え続けるスマートビルディングにおいて重要な要素だ。特に、人の行き来が多い商業ビルでは、テナントや動線の設計をするうえで非常に重要だし、オフィスビルにおいても、働く人たちが快適に過ごせる空間づくりの大きな一助となる。

 さらには、この人流データを使った新たなトライアルも行われた。地域のまちづくり協議会や大阪市などで構成される実行委員会による「なんば駅前広場」での社会実験だ。11月11~13日の3日間、駅前の主要道路の車の流れを止め、隣接するタクシー停車場を広場として開放。市場やカフェ、休憩スペースなどを設け、人々がくつろげる空間を期間限定で創出した。竹中工務店は、この実験に人流計測システムで協力。期間中、駅前広場の人流を計測・分析し、データを実行委員会に提供。今後の、安心・安全で、活力と魅力ある街づくりに役立てられるという。

図表 人流の見える化 2016年11月に開催された「『なんば駅前広場』社会実験」での人流モニタリング。人の動きが一目瞭然。広場の常設化計画などに役立つ。

オープンイノベーションの
プラットフォームに

「ビルとビル」「ビルと人」をつなぐことで、建物というハードから情報というソフトへ、価値が転換する。それを加速させるのが、クラウドが生み出す新たなプラットフォームだ。

「異業種の方とコラボレーションする中で、建物からいろんなデータが収集でき、そのデータに大きな価値があることに気づきました。『ビルコミ』がオープンイノベーションのプラットフォームとなり、多様なプレーヤーと新たな建物や街をつくっていきたい。古い建物に適用すれば、有効なリニューアルもできます。陳腐化しない、新鮮で魅力的な街づくりを目指しています」(児玉氏)

 少子高齢化時代にふさわしい都市のイノベーションとは何か。テクノロジーの恩恵を受けつつ、都市が持つ多様性を活かし、人が主役となるコミュニティを未来につなぐ、新たな試みが始まっている。

 


●取材・文|宮田和美(ダイヤモンドクォータリー編集部)


 

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