エクスポネンシャル技術と非線形思考で21世紀の課題をすべて解決するシンギュラリティ大学の挑戦

エクスポネンシャル技術と非線形思考で
21世紀の課題をすべて解決する
シンギュラリティ大学の挑戦

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 極端に聞こえるかもしれませんが、シンギュラリティ大学が求めている人は、いまの社会に適合(フィット)していない人たちです。こうした人たちがシンギュラリティ大学のプログラムに参加すれば、その「不適合度」はいっそう増すことでしょう。

 実は、こうした不適合者こそ時代の要請なのです。ですから、「いまの社会は生きにくい」と思っている人は、けっして自分のことを低く評価してはいけません。「あなたこそ、世の中を変える力の持ち主なのです」と申し上げたい。以上が、シンギュラリティ大学の問題解決の流儀です。

 チェンジ・ザ・ワールドの志を持った人たちが世界中からシンギュラリティ大学に集まってくる理由、言い換えれば、このキャンパスの魅力とは何でしょうか。

 やはり、「グローバル・ソリューション・プログラム」(GSP)でしょうね。

 この10週間のプログラムは、お金を払えば誰でも参加できる、というわけではありません。今回のGSPには40カ国から80人が参加していますが、約8000人の応募者から選ばれた人たちです。ちなみに、参加費は5万ドルですが、原則スポンサー企業が肩代わりしてくれます。

 このGSPに参加する方法は2通りあります。一つは、スポンサーによって開催される「グローバル・インパクト・コンペティション」(GIC)で勝ち抜くことです。

 GICは、これまでアメリカ、イギリス、フランス、オランダ、イタリア、スペイン、フィンランド、ノルウェー、南アフリカ、ブラジル、チリ、アルゼンチン、ペルーで開催されています。2017年は日本で開かれることが決まっています。

 もう一つは、自分と自分のアイデアを私たちに直接売り込み、採用されることです。

 この場合の評価基準ですが、年齢、性別、国籍、人種などはいっさい問われません。学校の専攻分野、コミュニティでの活動、従事しているビジネスなど、主にこれまでの実績について聞きますが、何より重要なのはアイデアであり、それが社会や未来にもたらすインパクトです。

 たとえば、オランダの21歳の若者がプレゼンテーションしたコンセプトは、尿を水と電気に変換するというもので、みごと選考を通りました。なお、この方法で選ばれた人は、グーグルがスポンサーになります。

 GSPの前半は、AIやロボット、医療、バイオテック、セキュリティ、ブロックチェーン等に関する講義を聞きます。その際、ピーターやレイをはじめ、シンギュラリティ大学の教授陣のほか、外部の専門家や起業家たちが教壇に立ちます。

 後半はワークショップです。通常、5ないしは6人のチームに分かれますが、たいてい、技術、マーケティング、財務など、スキルの異なる人たちで構成されます。チームに分かれたら、それぞれグランド・チャレンジのテーマを選び、その分野における課題を発見し、その解決策のプロトタイピングに着手します。非現実的なものは何の役にも立ちませんから、課題が実際に起こっている現場に足を運ぶチームもあります。

 参加者の大半が何かしらの新規事業のアイデアを持ってこのプログラムに参加してきますが、このプログラムを経験した後には、そのアイデアや方向性はガラリと変わってしまうケースがほとんどです。そのままシリコンバレーに残って起業する人が少なくありませんが、移民法の規制もあって、一部の人は帰国します。

 ビジネススクールのように、大企業のエグゼクティブやビジネスパーソン向けに、「エグゼクティブプログラム」(EP)も用意していますね。

 はい。これは8日間のプログラムで、2010年から始めました。年7、8回開催しており、参加費は一人1万5000ドルです。ホームページにも紹介されていますが、20世紀フォックスCEOのジム・ギアノーパロス氏、MITメディアラボ所長の伊藤穰一氏、元サンフランシスコ市長のギャビン・ニューサム氏、リンクトイン創業者のリード・ホフマン氏、AOL創業者のスティーブ・ケース氏などがこれまで参加しています。

 ですが、ここ数年、ここNASAエイムズ研究センター内での開催は減っています。実は、企業ごとにカスタマイズした2日ないしは3日間のプログラムを提供するようになったからです。また、7日間のEPの内容を2日間に凝縮し、一般に公開するのが、先ほどお話ししたグローバルサミットです。

 教育プログラムとは別に、昨年から「スタートアップ・アクセラレーター」という起業支援プログラムをスタートさせていますが、どんなビジネスが生まれてきましたか。

 このプログラムは、書類審査の後、インタビューを行い、合格者には、営利事業ならば10万ドル、非営利事業ならば5万ドルの資金を援助します。これまで、14の企業がこのプログラムを利用しています。いくつかご紹介しましょう。

 フェロー・ロボッツは、買い物客をサポートする自律型ロボット「NAVii(ナビー)」を開発した会社です。ホームセンターのロウズ・カンパニーがいち早く導入しています。そういえば、日本のヤマダ電機で実証実験が行われると聞いています。

 いわゆる開発途上国には約12億人以上の人たちが電気にアクセスできずにいます。この問題を解決するために、超軽量でポータブル、かつ安全なリチウムイオン電池「ジュピター6」を開発したのがトータス・パワーで、彼らは起業やビジネスモデルのコンテストでも高い評価を得ています。

 ジュノー・バイオメディカルは、脳卒中など、一度失われてしまうとほとんど回復不可能な機能が損われた患者に希望をもたらす存在になるでしょう。彼らは、細胞走電性という性質を活用し、微小の電流を用いて脳の損傷の回復を促す医療機器「セルテック」を開発しました。

 スタートアップ・アクセラレーターは今年で2回目になるわけですが、フィールド・レディという会社が選ばれました。このベンチャーは、3Dプリンターを使って災害復旧や難民救済など、被災地の現場活動を支援する会社で、ホワイトハウスが主催している「チャンピオン・オブ・チェンジ」でも表彰されています。

 私たちは、資金以外にも、これらスタートアップ企業を支援しています。たとえば、AIに話しかけることでストレスを緩和・解消する製品を開発したクレバーボットの例を挙げると、彼らをレバノンの難民キャンプに連れていき、現地のボランティアスタッフ、母親や子ども、老人などに利用してもらい、その成果を、投資家、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)や国境なき医師団に紹介しました。

 このほか、テーマ別の「エクスポネンシャル・シリーズ・カンファレンス」などの公開フォーラムなどもありますが、GSP、EP、スタートアップ・アクセラレーター、すべてのプログラムは相互に関連しています。

 すべてのプログラムとカンファレンスの参加者、そしてスポンサー全員との間に強い絆をつくり、それをグローバルなネットワークに発展させていきたいと考えています。このネットワークは、起業支援や資金調達はもちろん、グランド・チャレンジを解決するプラットフォームになるはずです。

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