【ブリヂストン】 ナンバーワン志向を受け継いだ「断トツ」経営津谷流 グローバル経営の本質 <1>

【ブリヂストン】
ナンバーワン志向を受け継いだ「断トツ」経営
津谷流 グローバル経営の本質 <1>

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軌道に乗せるまでに22年
いまでは米州事業が稼ぎ頭に

 ブリヂストンは1961年の株式上場以来、2001年上期の連結決算で初の赤字になり、300億円強の最終赤字を余儀なくされました。これもファイアストンの経営不振が大きかったのでしょうか。

 ファイアストン製タイヤを装着したクルマで横転・死亡する事故がアメリカであり、関連するタイヤを自主回収する大リコールを起こし、会社が成り立たないのでは、という事態に追い込まれました。

 通期の決算では赤字にならなかったのですが、反省すべき点がありました。ビジネスの基本に戻り、企業理念の体系やコーポレートガバナンスをきちんとしないといけないとか、優れた会社に近づきたいとか、いろいろ努力しました。

「最高の品質で社会に貢献」を創業者が社是として掲げ、経営の中核としてきましたが、あらためてこの言葉の重みを知りました。仕事のやり方、ガバナンス、グローバル経営をどう進めるか、考えましたね。

 創業者も、企業経営はずっと苦しい日々の連続だと言いましたが、その通りだと思います。何かを解決したら、また問題が起こってきます。気になること、不安なことについつい思いが行ってしまうので、本を読んだり、音楽を聴いたりして、ビジネスとは違う世界に入り込んで、気持ちを切り替えることが大切ですね。

 順風満帆ではなかったので、成功体験から抜け出せない「成功の罠」に陥らなくて済んだという面がありますか。

 1980年代後半に起きたバブル景気で、日本企業が不動産など過剰な投資で足元をすくわれましたが、ファイアストン買収で苦労したおかげというか、我々はバブル期に変なことをしなかった。ファイアストン問題への対応に追われて、できなかったと言うほうが正確かもしれません。

 楽な仕事はないし、楽な人生はない。こう思っていたほうが生きやすいし、仕事もしやすいものです。私たちはユートピアに住んでいるのではなく、幸せになるようにプログラミングされていません。でも一生懸命頑張っていると、時々、神様がごほうびをくれます。

経営の最終目標の一つが
真のグローバル企業

 ファイアストンなど米州事業が軌道に乗ったのは2010年からで、1988年の買収から22年の歳月を要したと発言されています。米州事業が単年度黒字化したのは1993年で、5年と22年、時期に大きな差がありますが、どういうことですか。

 2010年はブリヂストングループの業績に貢献し始めた時期で、米州事業を統括するブリヂストン アメリカス インクのCEOがブリヂストン本社と円滑にコミュニケーションできる経営者に交代しました。アメリカ人からアメリカ人へのバトンタッチで、現地の事情をよく知った経営者に任せています。

 頻繁に連絡を取り、グループのポリシーや戦略の下で、米州事業を運営できるようになりました。日本人を派遣してコントロールするのは日米の市場、労働環境、国民性などの違いもあって難しいと思います。

 どんな経営チームが必要で、日本側に足りないのは何かと模索しながら改革を進めた結果、米州事業の業績は上向き、グループ全体の業績も2010年からは右肩上がりです。お荷物だった米州で利益を上げ、2015年12月期の地域別営業利益は米州が2225億円。日本の1974億円、ヨーロッパの214億円、その他地域の682億円を上回り、稼ぎ頭になっています。

「真のグローバル企業」となることを経営の最終目標に掲げていますが、「真のグローバル」というのはどういう意味ですか。

 

 各地域が勝手に事業を進めるのではなく、グループ・グローバルで、統一した戦略とポリシーを持って事業を推進する必要があります。一方、どのような車、タイヤが好まれるのか、道路事情、気候、法規制など、地域によってニーズが異なりますので、地域に合った製品やサービスが求められます。
 タイヤは黒くてどれも同じように見えるかもしれませんが、材料、構造、大きさ、形、乗り心地の味付けなど、何千種類もの製品があります。

 グローバル化とローカル化のバランスをうまく取りながら、グローカルな企業を目指したい。真のグローバル企業はこれだとハッキリ言えませんし、永遠にできないでしょうね。

 グローバル経営に関わる会議の公用語は英語にしています。主語が曖昧で、ニュアンスをマイルドに伝えるのに便利な日本語と違って、英語でのやり取りは議論が明確になります。もちろん、日本のお客と接する時は日本語ですし、中国でビジネスする時は中国語を使いますよ。

*つづき(第2回)はこちらです


●聞き手|前原利行/岩崎卓也(ダイヤモンドクォータリー編集部)
●構成・まとめ|前原利行(ダイヤモンドクォータリー編集部) ●撮影|中川道夫


 

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