いまや、デジタルメディア上で自社の評価・評判を高め、企業の信用やブランド価値の最大化を図る時代に入った。にもかかわらず、日本の経営者はネット上の評判を軽視する傾向が強い。求められるのは「データドリブンなリーダーシップ」だ。

デジタル世界の評判を
軽視してはいけない

編集部:日本のインターネット広告の歴史は、有馬会長が立ち上げに参画した1996年の「Yahoo! JAPAN」で幕を開けたといえます。それから20年になります。

有馬(以下略):ネット広告の市場規模は約1・7兆円。テレビCMの7〜8割にまで成長しています。

 同時にデジタルメディアの世界は、SNSや動画などによって大きく広がりました。いまや、デジタル上でいかに企業の信用やブランド価値を最大化するかという時代に入ったといえます。逆に不祥事があれば、ネットの拡散力は企業にとって大きな脅威です。早期の収束が求められます。

 これを欧米では「デジタル・レピュテーション」と呼び、広告という概念に留まらず、ネット上での企業の評判を重視しています。

 日本の経営者は、ネット上の評判をどう見ているのでしょうか。

 残念ながら、日本の特に大企業は軽視する傾向が強いと言わざるをえません。海外ではP&Gのような伝統的なマーケティング企業はもちろん、多くのトップがネット上で発言し、率先してデジタル・レピュテーションの改善に取り組んでいます。ですが日本の経営者にはほとんど見られません。

 それはなぜでしょうか。

 経営層とマーケティング部署との間に大きなギャップがあると思います。「私はデジタルが苦手で」「ITがわからない」と言う経営者が多いのですが、それは海外なら「私は時代遅れの戦略しか知らない」と言っているのと同じ。最悪のアピールになってしまいます。

上司が部下に対して
データで示す時代

 経営者にも、デジタル技術、ITに対する深い知識と理解が必要ということでしょうか。

 知識というより、ビジネスに対するITの関与が変わったことへの認識が足りないということです。一昔前、ITはバックヤードの会計や給料計算などに使う単なるプログラムにすぎませんでした。しかしいまは、マーケティングに限らず、ビジネスを左右する重要なファクターとなっています。経営者はそのことに気づき、もっと理解を深めるべきです。

MAKOTO ARIMA
1996年にリクルートからYahoo! Japan第1号社員として参画。在籍中に広告ビジネスの拡大に尽力し、日本のネット広告事業の礎を築いた。その後グーグル日本法人代表取締役などを経て、現在AdRoll K.Kの取締役会長 兼 AdRoll Global副社長を務める。

 そして日本の経営者にこそ、「データドリブンなリーダーシップ」が必要です。データドリブンとは、グーグルの日本法人でも実施していたマネジメント手法ですが、同社では経営者や上司が部下に仕事を頼む時にも、データに基づいて説得しないと部下は動いてくれない。経験と勘でジャッジして「俺についてこい」は通用しないんです。

 数年もすれば、「デジタルマーケティング」という言葉自体がなくなり、あらゆるマーケティングがデジタルとは無縁ではなくなる時代が来ると思います。それは、市場開拓から顧客獲得までのマーケティング活動がすべて数値化される(できる)ということです。