官僚制を極小化すれば、生産性も収益性も劇的に改善する 

経営にもイノベーションが必要である<1>

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 経済学の教えによれば、取引費用、すなわち財やサービスを交換するうえで生じる費用全般を低減できるからこそ、組織をつくることが正当化されるわけであり、そもそもは、一人ではできないこと、一人では考えもつかないことを大勢の力や知恵を結集することで可能たらしめるために、組織は発明されたともいわれます。しかし、官僚制のせいで、かえって組織の高コスト化や非効率化が招かれ、本来の目的すら損なわれているとすれば、皮肉でしかありません。

 官僚制が問題であることに異論はないでしょうが、その具体的な罪についてじっくり考えたことのある人は、あまり多くないのではないでしょうか。皆さんと私の問題意識を共有するために、主だったものを挙げてみましょう。

  1.  ●新しい企画や事業を検討するプロセスが長いと、想定外の交渉や調整が派生し、最終的な意思決定が遅れ、時に  はせっかくの名案が潰されてしまうこともある。
  2.  ●組織図上のバウンダリー(境界)のみならず、派閥など非公式なバウンダリーが増殖しやすい。その結果、必要  な経営資源を調達したり、部門横断的に協力したりする際に支障が生じる。
  3.  ●組織単位の数が増えると、それらの調整に要するコストが上昇するだけでなく、管理者や監督者の数も増えるた  め、おのずと間接費が押し上げられる。
  4.  ●間接部門が肥大化すると、前例主義やリスク回避の傾向が強まりやすい。それに伴い、新しいアイデアや試み、  イノベーションが生まれにくくなる。
  5.  ●階層組織の大半では、末端社員に権限が与えられていない。しかも、もっぱら分業体制であるため、各人の仕事  の範囲や責任、仕事のやり方やプロセス、手続きが規定されており、必然的にサイロ化に陥る。当然、他部門と  の情報や知識の共有、協力や協働は進まない。
  6.  ●中央集権化によって、経理・財務、人事、教育研修、ITなどの社内サービスは一元化かつ効率化されるが、一  方で自由度が制限される。そのため、社内顧客と呼ばれるプロフィットセンターの個別ニーズはなおざりにされ  やすい。
  7.  ●組織メンバーの業績や貢献度を正しく把握・評価することが難しくなる。その結果、査定において口論や交渉に  費やされる無駄な時間が増えるばかりか、個人の成功は社内政治や社内人脈の影響を被りやすい。
  8.  ●階層組織では、新しいアイデアや計画を取捨選択したり、変更したりできる権限が特定の人間に集中することが  多いため、その人物の利害や関心、すなわち個人的な偏見によって意思決定が歪められる可能性がある。
  9.  ●経営陣は、組織の一体化と統制を重視するあまり、さらなる中央集権化を推し進める。その際、権力を掌握する  ことで、社内の調和、規模の経済、シンプルさ、ベストプラクティスを追い求める。こうした経営者の動機が何  であれ、結果として、現場の自律性のみならず、柔軟性、創造性が削がれる。
  10.  ●ヒエラルキーの上層部が、組織メンバーの人事権、言い換えれば「生殺与奪権」を握っているため、彼らに具申  したり反論したりすることが難しい。
  11.  ●最大の権力を握っている人たちが、社内で一番現場に疎く、変化に鈍感になりやすい。

DIAMOND Quarterly 第2号

2016年12月10日発売 定価840円(税込)

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