【パナソニック】 25万人を揺さぶり、覚醒させる

津賀改革の核心
「見える化」と「衆知」の経営<1>

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構図は見える。では、事業を成功させるには、どう切り換えていったらいいのでしょう。

 当社の創業者である松下幸之助の言葉で言えば「衆知を集める」ということをいかにやるか、ですね。

 ところが、社長になって最大の問題だと感じたのは、その仕組みがないことです。多くの重要な情報が社長に集まるけれど、それがタテ割りの組織から社長だけに集まる。これでは、「衆知を集める経営」はできません。そこで“形”を変えたんです。

 社長一人に情報が集まる構図を改め、チームに集まるようにしました。これがうまく回ってきています。それが「グループ戦略会議」で、事業の責任者と本社の役員、10名程度が集まり、さまざまな経営課題について議論します。

 たとえば家電事業の問題は、住宅事業の責任者に直接関係ないわけですから、普通はそんな議論につき合わされたり、知恵出しを求められたりすることはありませんよね。たしかに、ある意味で時間の無駄ですが、それを無駄というなら、そもそも社長は時間の無駄の塊ですから、チームで共有したわけです。そうすれば、犠牲者は社長だけじゃなくてメンバーも同志になって、みんなで知恵が出せる。そういう形に変えたのです。

それは「戦略本社」とは違うわけですね。

 以前の本社は、タテ割りの職能系(人事、経理、財務、経営企画等)に横の連携がほとんどなく、社長に報告する、もしくは社長に重要な意思決定を委ねるという形だったので、大きく変えました。

 話を戻すと、社長しか意思決定できない仕組みでは、この時代に非常に機能しにくいし、社長にとっても負担が大きく、ミスも多くなる。また、スピードも出ないので、「構図が悪い」と考えて、チームで早く決断する仕組みを整えました。同時に、そこで議論されたことや決まったことは、事業部長以上がイントラネットで共有できるようにして、誰がどんな発言をしたのか、社長がこの会議で何を言ったのかを「見える化」したのです。

 「衆知を集める」という意味では、いい形になったということですね。

 そうせざるをえなかったというのが正しいでしょうね。社長一人ですべてをやったら、ここまでスピーディに改革は進まなかったと思います。

 ただ、改革を進めることと、「成長戦略」を実行して実際に成長することとはかなり違います。成長戦略をつくるには、具体的な作業を伴います。自動車関連を扱う車載事業や住宅関連、海外の白物家電やサービス産業向けのB2B事業など具体的に事業領域を決めて、それぞれカンパニー社長クラスの人が責任者になって実務を回しています。その中で、M&Aの検討など、既存の組織に対するメリハリやリソースの割り振りを決めています。

なぜ、売上げ10兆円目標を
早期に撤回したか

 そうすると、売上げ10兆円の撤回で言えば、事業部なりの「願望」が出てしまった、本社のスタッフが期待値を込めて「伸びしろ」を高く設定しすぎたということでしょうか。

 最初から10兆円ありきだったのではありません。たとえば、車載事業は本気でやればもっと伸びしろがあるし、住宅事業も、日本では知名度が高いパナソニック電工を買収したので、さらに成長すると感じていました。

 最初はこの2つを重点領域にしようとしたのですが、そういう話をすると、家電も伸ばしたい、B2Bも伸ばしたいと、それぞれの責任者が言い出しましてね。伸ばしたいというのに、「お前のところは伸びなくてええんや」と言う必要はないので、どのくらい伸ばしたいかを聞いて、積み上げたら10兆円を超えたというわけです(笑)。

 ところが、ふたを開けてみますと、成長事業は徐々に伸びているものの、既存事業の縮小が予想以上に大きかった。そして昨2015年後半には、為替がフォローの風ではなくなってきた。こうなると、できもしない10兆円を掲げ続けるデメリットのほうが圧倒的に大きいですから、この旗を降ろすならば一刻も早いほうがよいと判断しました。

 2019年3月の目標ですから、普通はもうちょっと様子を見ようとか、M&Aでもっと稼げるかもしれないと考えますよね。

 現実と目標との乖離が大きいと、現場の活動に支障を来します。そうしないためにも、「高成長事業」「安定成長事業」「収益改善事業」という3つのカテゴリーで、自分たちの事業が置かれている状況を踏まえ、適切な戦略を取るべきだと考えました。当たり前といえば当たり前なんですが。

 「成長戦略」というのは、言うはやすく、やり切るのは難しいですね。

 それは、この会社が大きすぎるからなんです。それをさらに大きくしようとするから難しい。小さな会社を伸ばすのと違って、すでに伸び切っていますから。ですが、ここは成長できるという部分を伸ばすことはできると思います。車載事業がそういう領域で、やればやるだけ伸ばしていけると思っています。

*つづき(第2回)はこちらです


  1. ●聞き手|森 健二
  2. ●構成・まとめ|森 健二  ●写真|中川道夫

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