企業理念の実践で、自走的成長構造を構築

AI時代に価値を生み出す
「共鳴するマネジメント」【前編】

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「自走的な成長構造」を
構築できるか

 たとえば、事業の売却や工場の閉鎖です。ポートフォリオマネジメントにより、買収してポートフォリオに入れる事業がある一方、切り離したり売却したりする事業があります。オムロンはビジネスカンパニー制を採用しているので、普段のオペレーションは各事業に社長がおり、十分に回していける能力や権限もあります。ただし、事業の切り離しや撤退は痛みを伴いますので、それを決断するのはグループトップである私の役割なのです。 就任当初、山田さんは「社長の仕事は3つ。決めること、責任を取ること、社員を励ますこと」と言っています。「決めること」については、「特にネガティブな反対の多い決断は私の仕事」と言われましたが、実際、反対を押し切って決断したことはありますか。

 

 「責任を取ること」は覚悟を持つことだと思いますが、問題を先送りし、現実を見ようとしない経営者も多い。覚悟を持つためにはどのような体験や認識が必要でしょうか。

 まず、長期視点に立たないとダメです。策定した10年ビジョンの意味はそこにあるのだと、社長になってあらためて感じました。
 たとえば、中期計画はほぼ3年ですが、3年であれば、改善の手当てをすれば何とか乗り切ることができます。ですが10年となると、根本的な改革をしなければならない。痛みを伴ってでもいまやるべきだという発想になり、問題を先送りにせず根本的に変えていこうという力学が働きます。長期視点を持つことの重要性は、ここにあるわけです。
 ですからオムロンは、これからも10年ビジョン→中期経営計画→短期経営計画というサイクルを回していきます。10年後の社会はどういう姿か、その中でどんな価値を創出するのか、はたして世の中に存在を許されるのか。こうした議論を何度も重ねてきました。もちろんこれからもやっていきます。この積み重ねが、未来を見据え、そこからバックキャストで振り返る視点と覚悟を生むのです。

 

 「社員を励ますこと」はモチベーションを上げることだと思いますが、特に心がけていることはありますか。

 オムロンは徹底的に現場にこだわります。開発、生産、営業、お客様のそれぞれの現場で、実際に価値を創造することに意味があるわけですから、社員一人ひとりが誇りを持ってお客様に貢献し、世の中に役立っているという実感を持てることがすごく大事だと思います。TOGAはまさに、その一環です。

 

 7年間社長の仕事をされてきて、新たに付け加えることはありますか。

 私の社長就任以来のテーマが、「自走的な成長構造の構築」です。企業はどうしても外部環境に影響されるし、技術変化も激しい。社内でよく言うのは、「追い風には帆を全面に張って風に乗って進めばいい。でも、風が止んだ時や逆風が吹く時にも前へ進むには、強力なエンジンをみずからの船に積んでいる必要がある」と。
 つまり、いかなる環境においてもみずからの力で成長できる「自走的な成長構造」を構築すること。それが社長の大事な仕事だと考えています。どんな状況になっても価値あるものをずっとつくり続け、伝える努力も忘れなければ、お客様は評価してくれるし、世の中も受け入れてくれる。これがエンジンのイメージで、技術力とそれに裏付けられた価値ある商品やシステムを出し続けられるか。その先頭に立つのが社長の重要な仕事です。

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