【ソラコム】IoTスタートアップが一直線に目指す

「日本発」のグローバル・プラットフォーマー〈1〉

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 そして2010年、私はAWSの日本事業の立ち上げに参画することになります。インターネット黎明期のブラウザー「ネットスケープ」を開発したマーク・アンドリーセン氏が“Software is eating the world”(ソフトウェアが世界を飲み込む)と言い出した2011年に、AWSは東京にデータセンターを開設したのです。
 これに対して、日本では2通りの反応がありました。一つは、「これはヤバイ」という危機感です。「このままでは日本の企業は駆逐されてしまうから、AWSに対抗する仕組みをつくろう」と。もう一つは、「アマゾンのAWSはすごいサービスだ。ならばこれを利用して、自分たちのビジネスの価値をもっと高めよう。AWSを使いこなせる人材を増やそう」という動きです。
 言うまでもなく、私は後者でしたし、日本でAWSを広げたいと純粋に思いました。AWSの素晴らしさは、先ほどお話ししたように、起業のハードルを大幅に下げただけでなく、ボーダレスにビジネスを標準化できる点にあります。ですから、AWSを使いこなせれば、日本という枠にこだわらず、自分が考えたサービスを世界に向けて提供できるはずだと確信していました。
 たとえば、何がしかのインターネットサービスを日本で開発するとしましょう。AWSが登場する前は、日本のデータセンターの中で、日本の電源規格に合わせて仕組みをつくります。この日本製の仕組みをアメリカに持っていこうとしたら、新たに現地のデータセンターと契約し、アメリカの電源規格に合わせてつくり直さなければなりません。要するに、グローバルに展開するには、国ごとの仕組みを用意する必要があるのです。
 しかし、いまは違います。このような面倒はすべてAWSが解決してくれます。そして利用者は、最初につくった仕組みをコピーするだけでいいのです。実際、ネットフリックスはAWSを利用して、アメリカのオンラインDVDレンタルやストリーミングの配信ビジネスを、簡単に日本で展開することができました。
 これはクラウドのデータベースビジネスだからこそ可能とはいえ、使いこなせる人とそうではない人とでは、競争力が圧倒的に違ってきます。にもかかわらず、日本のプレーヤーの多くが、日本でしか利用できない〝ガラパゴス式〟の製品やサービスを設計しがち。だからこそ、AWSを日本に広めるべく、アマゾンデータサービスジャパン(現アマゾンウェブサービスジャパン)の扉を叩き、AWSのエバンジェリストになったのです。
 幸い、たくさんの方々にAWSの魅力をわかってもらうことができ、日本でのAWSビジネスはうまくいきました。ただし、AWSを武器に世界に挑戦する、日本発のグローバル・スタートアップはなかなか出てきませんでした。というのも当時の日本では、クラウドサービスのユーザーは大半が大企業だったのです。大企業を飛び出して起業してみよう、グローバルに打って出てみよう、という人は稀でした。

*つづき(第2回)はこちらです


●聞き手|岩崎卓也、宮田和美(ダイヤモンドクォータリー編集部)
●構成・まとめ|木原洋美 ●撮影|佐藤元一


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