マネジャーと
リーダーの違いとは

 信頼をベースとしたマネジメントについてできるだけ具体的に整理してきたが、この組織変革のためには、マネジャー自身の変革が欠かせないと考える。具体的にはマネジャーからリーダーへのシフトである。

 2つの役割は「管理職」という名の下にしばしば混同されるが、私はまったく異なる意味のものと考えている。「重い石を運ぶ」というチーム全体のミッションがあるとき、部下を最適に配置して石を効率的に運ばせるのがマネジャーであり、部下を叱咤激励しながら共に石を運ぶのがリーダーである。組織においては両者の役割が必要とされるが、変革の必要性に迫られた組織において求められるのは、間違いなく後者である。

 「ビジョンを創る」「役割を与える」「エネルギーを与える」。これらは変革を進めるリーダーにとって必要な要素である。また、この働き方改革の連載を通して、メンバーとの「対話頻度」の重要性にも気付かされることが多かった。

 未知の領域に突き進む変革において、メンバー一人一人は常に迷いの中にある。その中でメンバーが自ら考え行動するためには、その変革への確信をつくることが重要であり、日々の対話はその醸成に大きな影響を及ぼすものとなる。

 新しい取り組みは当初に定めた計画通りに進むことは少ない。だが、これを隠しながら進めてしまうとメンバーの不安は大きくなり変革を鈍らせる要因にもなる。これを対話の頻度を高め、お互いに腹落ちを重ねながら進めることが、変革そのものに活力をもたらし、成功につながっていくはずだと考える。

 思っていることを包み隠さず話してほしい──ボトムアップの動きを求める上司から部下へ語りかけられる言葉だが、これもやはり信頼関係がなければ空虚なメッセージとなってしまう。その信頼は日々の対話の頻度によってのみ生まれるものだと確信している。

  • 現場を深く知ることから
    新しいマネジメントは生まれる

  •  働き方改革は現在の日本が抱えた最も大きな課題の1つであることは間違いない。だが繰り返せば、働き方改革はマネジメント改革と一体になって初めて、個人の働く意欲を向上させ、組織の生産性につなげるという本来の目的を達成する。そしてそのマネジメント改革の方向性は、管理から信頼をベースにした仕組みへのシフトだと私は考えている。
     信頼が相互理解によって生まれることに注目すれば、ここに人財サービス会社としての役割が見えてくる。現場の業務を担う私たちが、それを形式知化することで、全社的な共有を促すことである。現場への理解のない信頼は、場合によっては「放置」と同義となるだろう。現場の管理にAIやIoTといったテクノロジーの活用が進むが、マネジメントと現場、それぞれのやる気をゴールにするための理解には、私たちのような存在が力を発揮する機会がまだまだあると考えている。
     人財サービス会社は「人財」を通して、企業の業務現場の改善に携わってきた。そこでのノウハウは、コンサルタントのそれとは違い、最終的に自分たちが現場でその業務を担うという覚悟の積み重ねによって培ってきたものだ。こうした現場のノウハウを企業の働き方とマネジメントの改革に生かし、信頼を基盤とした組織づくりを支援すること。これが人財サービスの新たな使命だと考える。


  • ●構成・執筆|川崎健一郎(アデコ 代表取締役)