【帝人】赤字と黒字を繰り返した不安定経営から脱却

長期的視点で種を蒔きイノベーションを加速〈2〉

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 また、いまのところうまくいっているものは限られますが、機能性食品もやっていきたいですね。「バーリーマックス」というスーパー大麦が腸によいということで話題になっていますが、これは我々が臨床試験を行い、本当に腸によいというエビデンスを示したことが奏功したものです。 

 それが、ネットなどで販売が広がっているそうですね。
 スーパー大麦については、「あの大麦はよいものなんだけど、高いから売れない」というのがそれまでの業界の方々の認識でした。こうした状況に対し、当社の知見などを活かして効果を実証し、皆さんに価値を理解してもらえるようにデータや情報を提供することでビジネスが変わってきたのです。付加価値というのは、別に新しいモノをつくり出すだけではなく、既存のモノの価値を発見したり、証明、紹介することでも生み出すことができるということです。
 ほかにもいろいろと取り組んでいまして、ITとヘルスケアを融合させたサービスとして、睡眠関連のビジネスも展開しています。もともと帝人は睡眠時無呼吸症候群の治療器で国内トップで、さらに拡大の可能性が大きいと考えていますが、一方で睡眠に満足していない日本人が、実は2000万人から3000万人もいるそうで、何とかしたい、気持ちよく朝を迎えたいと願っているわけです。
 こうした方々が必要としているのは何であろうかと、まずはウェブサイトを立ち上げ、そこできちんと役立つ記事、情報の発信を続けており、サイトのページビューは着実に伸びています。
 そして、眠れない方は呼吸と同調した音楽を聴くと眠りに落ちやすいことから、そのためのウェアラブル端末を販売し、それでも眠りにくい方には、スマートフォンでマンツーマンの相談に応じるなど、専属のコーチがついたようなサービスを提供しています。コーチングのサービスは有料なのですが、満足いただけるサービスを提供していけば、睡眠以外の分野にも広げていけるのではないかと考えています。

 公的保険外のビジネスだと、必ずしも日本の企業と組まなくても、海外の最先端企業と組めますね。アメリカに微量な電気を流して脳卒中の機能回復を助けるベンチャー企業があり、シンギュラリティ大学とうまくインキュベートしていますが、日本にはまだ来ていません。ヘルスケア分野のベンチャー企業は世界中で続々誕生していますが、今後、イノベーションのシーズ、コラボレーションのパートナーを探すうえで、どのような関心をお持ちですか。
 帝人のヘルスケア事業で展開したり、開発している機器の多くは日本製ではありません。最近で言いますと、アメリカのニューロネティクスが開発したrTMS(反復経頭蓋磁気刺激)装置を導入しました。これは磁気刺激によって、鬱病を治療しようというものですし、その他にも魅力的な医療機器などを数多く手掛けていますよ。
 また、帝人グループでIT事業を展開しているインフォコムが、アメリカのシリコンバレーを拠点とするフェノックス・ベンチャーキャピタルと戦略的パートナーシップ契約を結んでおり、これによりネットビジネスやヘルスケアIT分野の情報が入ってくることになります。
 帝人グループには医薬品と在宅医療の両方の事業を持つ強みがあり、今後の展開に向けての基盤やチャンスはあります。後は何が足りないかを見極め、最先端の機器やサービス、システムなどを導入すればいい。自社で創出していければよいのですが、そこにはあまりこだわっていません。足りないものは外から持ってきてしまえばいいのではないかと思っています。

 医薬品ビジネスでも自前主義にはこだわらないのですか。
 私どもはスペシャリティの新薬メーカーですし、特に薬価制度が変化していく中にあって、世界に通用する自社新薬を出していかなければ生きていくことはできません。一方で導入品(他社が途中まで開発した製品を、ライセンス契約を結んで、その後の開発を引き継いで販売する製品)も、生きていくために扱わなければなりませんが、収益が伸びるということはあまりありません。
 私どもは日本にしか営業拠点がなく、国内市場しか対象にならないため、導入品の売上げは限定的です。自社新薬が出るか出ないかは確率論ですが、生み出すことができなければ新薬メーカーとしては成り立ちません。

 製薬メーカーはどのようにして収益を上げればいいのですか。
 10年に一つでも自社新薬が開発できれば、たぶん成長の絵を描くことができるでしょうが、薬価は下がる、ジェネリック医薬品が登場するという状況では難しいですね。各社のパイプラインを見ても、端境期で新薬が出てこない状況のように思えます。
 帝人グループのヘルスケア事業には、医薬品とともに在宅医療という違う分野の事業があり、この2つの成長事業を展開しながら、自社新薬のR&Dも展開していける。「ながら」ができる体制であることが、私どもの強みであると思っています。

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