【帝人】赤字と黒字を繰り返した不安定経営から脱却

長期的視点で種を蒔きイノベーションを加速〈1〉

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 イノベーションを起こすために、若手有志のネットワークのようなものが、社内にあるのですか。
 いろいろな仕掛けをつくってくれています。2012年頃から「One Teijin」を実現・強化する運動に取り組んできましたが、その中で人事部を主体に「One Teijin Award」という仕組みをつくり、自由なアイデアや失敗を恐れないアクションを募集し、みんなで讃えて実現を後押ししてきました。所期の目的を達成し、2016年度をもってこの取り組みはいったん終了しましたが、また、若干形を変えてスタートすることになっています。このような仕組み、仕掛けは必要ですね。
 もう一つの仕掛けとしては教育の場があります。若手管理職向けとしてはSLP(ストラテジック・リーダー・デベロップメント・プログラム)という人財育成プログラムがあり、その中で、グループで何か新しいビジネスやサービスなどを発表するのですが、これが意外と自主的な活動を促しています。
 そのほかにも「One Teijin」の一環としてスタートしたFLM(フロント・ライン・マネジャー)研修という営業教育があります。それまで分社化していたため、それぞれの事業が別会社だったのですが、お客様から「帝人の社員が別々に3人も来たよ」という話が頻繁に聞かれました。そういう状況から脱却し、事業や組織を超えた「One Teijin」としての強みを最大化する、FLM研修はそのための基盤となっています。

 分社化、事業部制を採っている会社では、よくあることですね。
 恥ずかしいことですし、お客様の迷惑にもなりますね。それぞれの営業が、他部門の事業内容も知らない、製品も知らないという実態が明らかになり、まずは教育から始めようと。それでMBA(マテリアル・ビジネス・アカデミー)という組織を立ち上げ、最初は新入社員の営業職に3カ月間の合宿教育を行い、そこで帝人グループのマテリアルを全部叩き込む。マテリアルのことだけでなく、マーケティング教育なども取り入れています。
 そもそも新入社員教育としては、2週間程度の座学研修の後、アジア諸国での1週間程度の研修を行います。現地学生とのディスカッションなどでは、だいたい新入社員はみずからの考えを主張できず、カルチャーショックを受けて帰ってきます。その帰国後に、営業系はすぐに現場配属せず、合宿研修に入るのです。その効果は大きく、2年目、3年目の社員にも広げました。すると今度は「上司が他部門の事業、製品を理解していない」という話になり、部長クラスまで含むFLM研修につながっていったのです。
 事業管理や事業企画の担当者だけが投資回収性などと言っていても、前線の社員たちが「この事業の利益率はどれくらいか」などをわかっていないと、新事業の提案に進んでいきませんし、イノベーションも起こせません。
外部環境や内部環境を、強み、弱み、機会、脅威の4つのカテゴリーで考える「SWOT分析」や、収益性を左右する5つの競争要因から業界の構造分析を行う「ファイブフォース分析」などを当たり前のように駆使し、どこで差別化するかを同じ言葉で議論する。こういうことが普通にできないようでは、個人も会社も強くなれません。
 こうした取り組みをやり続けて5年が経ちましたが、「10年続けると強くなるぞ」と社内で発破をかけているんです。

 別会社だった事業を一堂に集め、社員を交流させたことで、変化は見られますか。
 研修や、さまざまな場面での人との交流により、自主的な行動や有志的なつながりが見られるようになっています。こうした状況を見ていると楽しいですね。ただ、10年ぐらいはやり続けないと共通言語にはなりません。部門間のコミュニケーションがさらに深まり、アイデア、ノウハウ、技術を出し合って共同開発をしたり、新たなイノベーションが社内で生まれることを期待しています。

*第2回はこちらです


●聞き手|前原利行/岩崎卓也(ダイヤモンドクォータリー編集部)
●構成・まとめ|前原利行(ダイヤモンドクォータリー編集部) ●撮影|和田佳久


 

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