破壊は危機かチャンスか

破壊的変化の中でCEOが持つべき視点

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 KPMGは2016年に続き、「KPMGグローバルCEO調査2017」を実施した。経済的、あるいは地政学的な不確実性がますます高まる中で、世界のCEOたちは事業への影響をどう見極め、自社の成長に向けてどう対処しようとしているのか。

 もはや不可逆的となった破壊的変化の荒波に向き合わざるをえないこの時代、CEOが持つべき視点と資質について、2017年11月にKPMGインターナショナルのトップであるチェアマンに就任した、ビル・トーマス氏に聞いた。

破壊的変化をチャンスととらえ
果敢に挑戦すべき

編集部(以下青文字):2017年11月に東京で開催された「世界経営者会議」で強調したことは何ですか。

BILL THOMAS
KPMGカナダのCEO兼シニアパートナー、KPMG南北アメリカ地域の会長を経て、2017年10月、KPMGインターナショナルの会長に就任。2009年以降、世界4大会計ファームの一つであるKPMGのグローバルボードおよびエグゼクティブコミッティのメンバーとして、グローバル戦略の立案をリードした。ブリティッシュコロンビア大学卒、公認会計士。

トーマス(以下略):KPMGは毎年、主要10カ国を代表するグローバル企業のCEO約1300人にインタビューを行い、今後3年間の経営の見通しと、取り組むべき重要課題に対する意識を調査しています。

 約1300人のうち100人が日本のCEOです。今回の調査から浮かび上がったのは、日本企業は業績を大きく改善しているものの、向こう3年間の経済成長見通しについて、日本のCEOは非常に悲観的だということです(図表「今後3年間の成長見通しに対する自信」を参照)。特に世界経済については、2016年は93%が成長見通しに「自信がある」と回答していましたが、17年は21%に急落しました。

 その理由として、ブランドリスクやグローバル経済のリスク、地政学的リスクが挙げられます。日本のCEOは、不安定な世界情勢が経済に及ぼす影響に対する懸念を強めており、慎重な姿勢が読み取れます。それゆえに、市場進出スピードの向上や、破壊的テクノロジーの導入、イノベーションの促進について、これまで以上に重要視する姿も回答結果からは見受けられました。

 

 この結果から、グローバル化、それに伴う地政学的リスクへの対応などは、残念ながら、欧米のグローバル企業と比べて、日本企業は遅れていると言わざるをえません。イノベーションについても、ラディカル(急進的)でディスラプティブ(破壊的)な非連続的イノベーションとなると、あまり得意とはいえません。

 不確実性が増す中、日本のCEOは本業の強化を重視しています。今後3年間の戦略的優先事項として、日本では「既存の市場への浸透活動の強化」が61%と最も多く挙げられました(世界全体は53%)。次世代に向けた成長のためには、日本企業がこれまで大切にしてきた「顧客の声に耳を傾けること」の重要性は変わりませんが、やはり継続的な企業変革と投資が必要です。また、日本のCEOが今後3年間で優先する投資分野の第1位に「規制対応」を挙げています。ここから読み取れるのは、日本企業は依然として保守的な傾向が強く、変化の激しい時代を生き抜くには準備不足ではないかということです。ですから、破壊をチャンスととらえ、果敢に挑戦していくことが重要だと、私は「世界経営者会議」で訴えました。

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