「ねじガール」が会社経営を変えた!現場主導の変革をマネジメントはどうサポートすべきか

連載:働き方フロンティア 【第6回】

「ねじガール」が会社経営を変えた!
現場主導の変革をマネジメントはどうサポートすべきか

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経営者のマインドを変えた
女性社員たちの活躍

 

アデコ:女性社員が「触媒」になって現場の安全性が高まったということですね。それ以外の気付きはありましたか。

柿澤:熱意があれば性別にかかわらず現場の仕事をできるんだと経営者の私自身が気付かされました。正直、「どうして以前は男性にこだわっていたんだろう」と思いましたね。というのも、その女性社員は仕事の習熟のスピードが非常に早く、男性社員を超える力をすぐに現場で発揮してくれたからです。

 ねじ作りは、大きく「ヘッダー工程」と「転造工程」に分けられます。針金からねじの頭の部分を作るのがヘッダー工程で、そこにギザギザのねじ山を付けていくのが転造工程です。うちでは、現場に配属される新入社員に入社した年の5月くらいからそれらの工程に使う機械を使わせ始めます。「年内に5台の機械を一人で動かせるようになったらその社員は習得が早い」——私の中ではそうした物差しを持っているのですが、私がこの会社に入ってからの21年、そのハードルをクリアした社員は一人もいませんでした。しかし、その女性社員は難なくクリアしたんです。

アデコ:その方はとりわけ優秀な女性だったということでしょうか。

柿澤:もちろん、彼女の能力や努力があったのは間違いないと思います。しかし、次の年から現場担当の女性社員を増やしていくに従って、女性は目の前の作業ばかりでなく、少し目線を先に置いた仕事の捉え方ができるという特性に気づくことができました。結果として仕事の習熟も早い。もちろん、体力的に男性にしかできない作業はありますが、女性に優秀な人が多いのは確かであり、労働力の確保や生産性の向上という点では、大きく意識が変わりました。

アデコ:ねじガールの活躍は採用などにも影響していますか。

柿澤:大きく影響しています。就職説明会などで、ねじガールたちが自らの仕事を本当に楽しそうに語ってくれるので、入社を希望する女性が非常に増えました。最初から「私もねじガールになりたいです」と言って入ってくる人もいます。また、最近では「どんな仕事でもいい」と言って当社を選んでくれる学生もいます。恐らくねじガールたちの働いている様子が「働きがいのある会社」というイメージをつくってくれているのでしょう。今では、80人の社員のうちの半数は女性になっています。

アデコ:女性社員の比率が上がると、工場ばかりでなく会社の環境も変わってくるのではないでしょうか。

柿澤:そう思います。例えば、以前は有給休暇の取得単位が半日でしたが、この仕組みは子育て中の女性には使いにくいことが分かりました。保育園に行く前にちょっと子どもを病院に連れていくなど、1、2時間程度で済む用事の場合でも、半日休まなければならないからです。そこで1時間単位で有給を取れる仕組みに変えました。

 このほかにも、工場を女性でも働きやすい環境にする取り組みが進んでいます。例えば、女性用トイレに大きな化粧台とソファが設置されていますが、これは休憩時間や退社前にメークをしたり、ちょっとひと息ついたりするためのものです。また、更衣室にも椅子とテーブルが置かれていて、会社で仕事を終えて家に帰る前の憩いの場となっています。これらは、ねじガールの意見によって実現したことです。

 

アデコ:女性の働く場を拡大したことで、取り組むべき課題が見えてきたということですね。

柿澤:女性でも工場で働けるという認識が広がったことで、ジョブローテーションを積極的に行えるようになりました。工場の仕事は職人技的な側面もあって属人化しがちです。そうなると、休みたくてもなかなか休めない環境になってしまいます。現在はジョブローテーションによって1つの仕事を複数の人ができるという状況になっていますので、1人が休んでも会社の生産性は落ちません。社員は気兼ねなく休みを取れるようになっていると思います。また、産休を取った場合などでも、決まった仕事しかできないという前提がなくなったことで、はるかに復帰しやすくなっています。

 もちろん、こうした仕組みは女性だけに影響を与えるものではありません。結果的に、男性を含む全ての社員が休みやすく、さまざまな仕事のスキルを身に付けられる。そんな仕組みが出来上がりました。

アデコ:組織の在り方や仕組みが変われば、会社のカルチャーも変わりますよね。

柿澤:その通りですね。1歳児の双子がいる女性を採用したことがあって、子どもの病気などで突発的に休むことが多い時期がありました。しかし、周囲の社員がそれをフォローして、できるだけ気を使わずに休めるような雰囲気をつくってくれました。子どもがいる人もいない人も含めて、よく支えてくれましたね。 そんな助け合う雰囲気が生まれた背景には、女性が戦力だということが、会社の常識になったことがあると思います。

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