リアルワールドに浸透するAI

「超知能」との共創が始まる

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AI同士の直接会話が
次なる可能性の扉を開く

 これまでのコンピュータは、人間の能力や脳を補強・拡張する方向で進化してきました。最近のAIスピーカーなどの発売で注目されている自然言語処理や、大量のデータに基づく分析や予測などの領域では、IBMのワトソンや、グーグルが買収したディープマインドなどが頻繁に話題に上ります。画像認識分野に留まらず、聴覚を担うセンサー群や触覚センサーを組み込んだ作業ロボットの発展にも目を見張るものがあります。これらはいくつかの分野では、すでに人間の能力を凌駕する実力を示し始めています。

 量子コンピュータの登場は、こうした動きをさらに加速させる可能性があります。一般的なフォン・ノイマン型のアーキテクチャーを持つコンピュータでは不得意な一部の問題を、量子コンピュータでは即座に解くことができるものと期待が高まっています。深層学習に特化したタイプのプロセッサーの開発も、各社で進んでいます。

 最近注目されている分野に、AI同士の協調動作があります。象徴的な例が、囲碁の名人を破った、ディープマインドのアルファ碁です。長年蓄積された棋譜を読み込んで学習するだけでなく、アルファ碁同士が繰り返し対戦することで、その能力を飛躍的に向上させました。アルファ碁を開発したディープマインドは、次のチャレンジとして多人数のネットワークゲームを選びました。リアルタイム性が要求されるゲームという領域で、今後どのような戦い方を見せてくれるのか楽しみです。

 AI同士のコミュニケーションは、AIの自己学習への道をさらに開こうとしています。その一つが敵対性生成ネットワーク(GAN: Generative Adversarial Network)です。相対立する情報を相互にやり取りすることで、AIとAIの強化学習を行い、妥当な解へと近づいていくというアプローチです。グーグルはAI同士が互いの知識を高め合うためのフレームワークを構築し、一定の成果を収めています。

 専門領域に特化したAIは、すでに私たちの生活やビジネスに入り込んでいます。一方、汎用的な能力を持つAIの開発は当面は困難で、実現するとしてもかなり先だといわれています。ただ、専門特化型のAI同士がつながる未来は、意外に早く到来するかもしれません。

 これは私の、言わば妄想です(図表2「AI群同士の融合」を参照)。異なる得意分野を持つAI群がAPI(Application Programming Interface)を介して相互につながれば、どのような風景が現れるでしょうか。気象向けのAIがハリケーンの規模や進路を予測し、そのデータを株取引や為替取引で活用されているAIに送る。あるいは、サプライチェーン分野のAIと連携すれば、倉庫や物流事業者にタイムリーな指示を与えるなど被害の最小化を支援してくれるかもしれません。

 SF映画などでは、よくAIと人間との〝敵対関係〟が描かれますが、私自身は、両者の関係を補完し合いながら共創する〝パートナーシップ〟だと考えています。よりよい共創関係を築くことで、遠い未来だと見られていたことも、意外に早く実現するかもしれません。いささか楽観的といわれるかもしれませんが、私は技術と技術を制御する人間の知恵を信頼したいと思っています。

 


  1. 構成・まとめ|津田浩司、新井幸彦 撮影|竹井俊晴

 

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