リアルワールドに浸透するAI

「超知能」との共創が始まる

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高精細・マルチスペクトル化
視力拡大のインパクト

 同時に、カメラの高精細化やセンサー類の高性能化により、リアル世界のインデックス化が進行しています。グーグルのストリートビューも、第2世代ではより高精細な画像を取得できるだけではなく、街並みの様子や、レストランの店先に掲げた手書きのメニューまで読み取れるようになるでしょう。

 ストリートビューのデータと、ユーザーのスマホで撮影した画像の統合が実現すれば、リアル世界をデジタル空間でより精緻に再現できるようになります。そこに、多数のセンサー群を搭載した自動運転車が、刻々と収集する画像データが加わればどうなるでしょうか。リアルタイム性はさらに高まり、利用用途も大きく広がるはずです。

 これに対して、はるか上空からリアル世界のインデックス化を加速しているのが衛星画像群です。衛星の運行頻度は高まり、世界各地の日次の画像を手に入れることも視野に入ってきました。同時に、画像の分解能も飛躍的に向上しています。大量に取得した時系列の画像データを用いて、企業業績を予測した研究もあります。研究チームは全米96の小売店25万カ所の駐車場の車の増減をトラッキングしました。その結果、ある大手百貨店チェーンの駐車場の台数が大きく減少していることを突き止めました。研究結果が公になった直後、この企業は130店舗の閉鎖を発表しました。

 衛星画像は世界経済の動向把握にも役立ちます。石油タンクのふたの上下動は、ふたの内側に写った影の大きさで判断することができます。そこで、ある研究チームは衛星画像を解析して、中国における石油タンクの数と総備蓄量を推定。従来の手法とは異なる、ユニークなアプローチの可能性を示しました。

 このほかにも、高精度の画像認識は幅広い領域で応用可能です。医療分野はその有力な候補の一つとなっています。大量の画像を読み込んで読影能力が上がれば、いままで以上に医師を適切にサポートすることができるようになるでしょう。

 ビッグデータを収集する通信環境の強化も進んでいます。世界各国の通信キャリアが次世代通信技術として取り組む5G(第5世代移動通信システム)は、日本では2020年にも商用化の見込みです。これまで以上に大量のデータを、高速かつ低遅延でやり取りできるようになり、しかも同時に多数のデバイス群からデータを収集することができます。

 高速ネットワークの整備は、リアル世界のインデックス化をさらに促進するでしょう。たとえば、グーグルはスマホを活用して、建物内の空間情報を取得する実験を行っています。店舗を歩き回りながらスマホで動画を撮影し、その画像を処理して店舗内の構造や棚に置かれた商品の状況を把握しようという試みです。将来的には、スマホを片手に店内を歩くだけで商品の棚卸や在庫管理ができるようになるかもしれません。

 リアルの世界をより詳細に把握できれば、AR(拡張現実)の可能性も広がります。ヘッドセットを使ってバーチャルな映像世界に没入できるVR(仮想現実)と似ていますが、ARではリアルの世界の上にさまざまな情報が重畳され、刻々と同期するようになるでしょう。

 小売店舗においても、ネットとリアルの融合が始まろうとしています。アマゾン・ドットコムなどが進める無人店舗の実験では、店内の商品一個一個と、顧客の行動を、カメラやセンサーによってモニタリングし、ネットとリアルを融合したデジタルな店舗運営を実現しようとしています。未来のショッピングの形も大きく変わろうとしているのです。

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