企業文化と価値観の共有から始まる

「働きがい」のある
革新的企業のつくり方<1>

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 また私たちは、「基本理念」とそこに示されている価値観を大切にしています。これらは、ゴアを形づくるものであり、私たちの仕事のやり方に影響を及ぼし続けています。この基本理念は、私たちはどのような会社なのか、その核心を語るものであり、ゴアの成功の礎でもあります。ご説明しましょう。

 個人:個人は計り知れない可能性を秘めており、適切な環境の下では、素晴らしいことを成し遂げる力を備えている。
 小さなチームの力:小さなチームの一員として一緒に働くことで、オーナーシップが芽生え、結果を出す、という前向きな意識が共有される。
 全員がひとつ船の上:ゴアにとって最高の利益となるよう、力を合わせて努力することで、全員に成功がもたらされる。
 長期的視野:長期計画を立案し、短期的ニーズとのバランスを上手に図ることで、より大きな成功が実現する。

 当然ながら、私たちの価値観は、先の基本理念と原則に由来するものです。いくつか例を挙げると、1対1のダイレクト・コミュニケーション、高度な倫理と誠実さ(インテグリティ)への責任、ゴア製品がそもそも意図した用途に間違いなく使用される責任、貢献度に基づく報酬などがあります。これらの価値観は、ゴアの評判を高め、これを維持する一助となり、アソシエート同士のコミュニケーションを強固なものにし、なおかつ革新的な新製品開発を後押しするものです。

 指針となる原則に、第一に「フリーダム」を挙げていますが、通常、自由には果たすべき責任を伴います。ゴアの場合、それは何でしょう。

 このフリーダムの原則は、時に「事業ニーズとは無関係に、やりたいことは何でもできる」と誤解されることがあります。しかし、自由には限界がありますから、アソシエートたちは分別をわきまえ、責任ある行動を取る、と信じています。

 この責任感は、「全員がひとつ船の上」という3番目の信条に表されています。すなわち、ゴアが負うリスクと得られる見返りは、各人の行動が会社のみならず、他のアソシエートたちに広く影響を及ぼすことを意味しています。

 この「全員がひとつ船の上」という信条を形にしたのが、アソシエート持ち株制度です(注)。ゴアは長期にわたって成功を収めてきました。ですから、その中で、各人が(自社株という)既得権を持っています。

 持ち株制度と企業文化の他の要素を組み合わせることで、「ゴアは自分たちの会社である」というマインドセットが育まれます。その結果、アソシエートたちは、自分たちは一つになって努力していると感じ、また意思決定を下す際には、ゴア全体にとって何が最善であるのかを常に考えるべきだと思うようになるのです。

注)日本の現地法人である日本ゴアでは、会社全体の企業価値に連動して退職一時金が支払われる特別退職金制度になっている。

階層や上下関係を
排する

 ゴアでは、企業文化が経営のプラットフォームになっているのですね。先ほど格子型組織と言われましたが、どのような構造になっているのでしょう。また、その長所、あるいは短所は何ですか。

 格子型組織について申し上げると、そこでは、アソシエートたちが互いに連携しており、双方向のコミュニケーションを図り、社内人脈を育み、知識を共有するための手段といえます。ですから、ゴアでは、アソシエートたちが連携して働くのに、指示や命令などは不要です。どのように事業を運営し、どのようなコミュニケーションが必要なのかは、格子型組織が教えてくれます。

 この組織構造の下では、アソシエートたちは、仕事の上で必要な人たちとつながることができます。1対1で直接コミュニケーションできる環境があれば、情報はよりスムーズに、よりスピーディに、より正確に流れ、コラボレーションと創造性はよりいっそう高まります。

 このように仕事や事業を行うことのメリットは明らかですが、一方で、事業規模が拡大し、複雑性が増すに伴い、具体的なアカウンタビリティ(結果への説明責任)と意思決定の「見える化」が求められます。そのためには、オーナーシップを明確化し、意思決定プロセスの迅速化が必要です。

 ただし、これはバランスの問題であり、これが崩れないよう注意しています。お役所仕事を増やしたり、ゴアの文化的価値観にそぐわない階層を導入したりするのは、私たちの望むところではありませんから。

*つづき(第2回)はこちらです


  1. ●聞き手・構成・まとめ|岩崎卓也(ダイヤモンドクォータリー編集部)

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